国民的アイドル・嵐を生んだマーケティング術。カギは「6人目の嵐」の存在
ニューヨーク大学、スターン経営大学院でMBAを取得後、クラフトフーズ社やアメリカン・エキスプレス社などいくつものグローバル企業で活躍された経歴を持つ、IBAカンパニー代表取締役社長の射場瞬さん。
アメリカの最新情報やこれまでの知見をもとに、日本企業のデジタル化やマーケティング戦略などのサポートを行うIBAカンパニーを2010年に設立。2021年6月には自身もファンであるアイドルグループ「嵐」を実例に用いた『「嵐」に学ぶマーケティングの本質』(日経BP)を出版しました。
今回は、マーケティングの最先端を進む射場さんが考える「ブランド」と「ブランディング」の違いや嵐に学ぶマーケティングの本質についてフジテレビ「#シゴトズキ」MCの清水俊宏さん(@goodboytoshi)が話を聞きました。
日本企業のデジタル化をサポートするには?
清水俊宏(以下、清水):IBAカンパニーでは、日本企業のデジタル化をサポートされていると伺いました。
射場瞬(以下、射場):いまアメリカで進んでいるビジネスモデルやデジタルの技術をできるだけ活用して、日本企業がスピードを上げてアメリカの知見を使えるようにお手伝いをしています。日本とアメリカは違う国なので全く同じ戦略ややり方が通用するわけではありませんが、デジタル化や流通、金融においてアメリカは日本より数年進んでいる領域が多いと感じて居ます。
清水:日本は何年遅れくらいのイメージなんでしょうか。
射場:領域によるので一概には言えないのですが。例えば、データ分析やAIや機械学習、CRMなどを活用してマーケティングを効率良く進める、収益に繋げるという分野などは、7年くらい遅れている印象を持っています。流通や金融の領域でも、デジタル化やそのデータ活用等、米国がここ3~4年で急激に変化したので、大きく遅れてきていると思っています。
もちろん、領域によっては日本のほうが進んでいる部分もありますが、遅れている部分やさらに面白いやり方が生まれている部分においては、アメリカを参考にするのは非常に学びになると思います。例えば、スマートフォンが日本に入ってきたとき、多くの日本企業は「日本ではガラケーが発達しているし、消費者はガラケーの機能で満足しているから、スマホは受け入れられないと思う」と予想していましたが、実際には、素晴らしいスピードで使用が進みました。
日本とアメリカの事情は違うのか?
射場:タイムマシン経営と呼ばれますが、海外ですでに成功している事例が、日本にどれだけ影響があるかを見極めることは非常に大切だと思っています。UberEatsのようなデリバリー特化型サービスもアメリカでは8年くらい前から注目されていました。
その際も「日本では、デリバリーがそこまで広く使われない」という意見が多くきかれました。コロナの影響もありましたが、現在では広く普及しています。新しい、より便利なものに触れたとき、消費者の行動は変化する。アメリカの技術やサービスが入ってきたとき、一気に行動が変わる可能性があるといういい例かと思います。
射場:これまで、アメリカでの変化を説明すると「非常に興味深い。しかし、日本は特別で、日本とアメリカの事情は違う」というコメントをいただくことが多かったのですが。ここ直近1年くらいでアメリカのビジネスモデルは変化を真剣に、深く学びたいと言ってくださる企業が増えました。
消費者の意識も変わり、スマートフォンなどのデジタル技術が発達し、データを巡る環境も急変していることで日本におけるビジネスモデルは大きく変化しています。先を見据えるためにもアメリカのマーケットやその変化を見ておくことは非常に参考になると言えるでしょう。