職場の「ハラスメント調査」は本当に信頼できる?理化学研究所で悪質な事例も
会社を守る悪質なハラスメント調査も
しかし、すべてのハラスメント調査が正当な目的のもとで行われるとは限りません。たとえば担当者から、以下のような会話が展開された場合は、悪質なハラスメント調査の可能性があります。
担当者「被害者●●さんも悪いところがあったから、行為者●●さんはこのような発言になったのですよね?」
担当者「行為者●●さんも優しいところありますよね? 以前に●●の案件で被害者●●さんのことをほめていましたよね?」
担当者「行為者●●さんは、他の部下3名とは良好な関係ですよね?やっぱり被害者の●●さんの方に何か問題があるのでしょうかね?」
共通するのは行為者にとって有利になるハラスメント調査の報告書を作成するために、誘導的な質問を用意していて「イエス」を言わせるように仕向けてきます。このようなハラスメント調査には気をつけましょう。
2013年、理化学研究所の非正規職員Aさんが同年代の女性職員からのパワハラ被害を理研本部のコンプライアンス室に相談。コンプライアンス担当者による関係者への聞き取り調査が行われましたが、パワハラの事実は認定されませんでした。
翌月、室長から呼び出されたAさんは、雇用契約を更新しないことを告げられました。理由はコミュニケーション能力が足りない(コンプライアンス室に相談したから)でした。その後、理研側と話し合いをしましたが、解雇理由はいつの間にか「予算上の都合」にすり替わり、パワハラを揉み消しされました。
納得できないAさんは、さいたま地裁に不当解雇による労働裁判を申し立て。審理の結果、理研側がAさんに30万円を支払う審判が下されました。
ハラスメント調査への対処法3つの要点
行為者を守る前提のハラスメント調査が行われた場合の対処法の一例として、以下3つのポイントを軸に調査状況に合わせた対応をとるのが良いでしょう。
「なぜ行為者が守られるような一方的な質問ばかりするのか、担当者に確認する」
「(自分への聞き取りが終わった後に、どう考えても行為者が有利になる質問が多く、不信感を持った場合)根拠を伝えて調査協力を辞退することも1つの選択肢に入れておく」
「被害者がいつ、どこで、どのようなハラスメントを、どのくらいの頻度で被害に遭っていたか信憑性のある証言をする」
そもそも、ハラスメント調査の協力は断っても良いのでしょうか? 特別な事情がない限り、原則は協力するのが望ましいですが、何らかの理由により協力したくない、あるいは協力できない場合(正当な理由がある場合)は会社の担当者に相談するのが良いでしょう。