なぜ現代人は孤独を感じやすい?「私達を洗脳するもの」の正体
あなたは、「さみしさ」を感じることがありますか。もしあっても、安心してください。「さみしさ」を抱えているのは、あなただけではないからです。人間は、誰もが「さみしい」のです。
孤独と無縁な人はいません。お金、名声、容姿、社会的地位に恵まれている人も、実はあなたと同じように、「さみしさ」を胸中に抱えているのです。とくに先進国では、今多くの人々に、孤独が広がっていると言われています。
「さみしさ」の原因はどこにあるのか
一体、なぜ、私たちは「さみしい」のでしょうか。そしてなぜ今、多くの現代人が、孤独を感じているのでしょうか。孤独の起源は、人類の祖先に遡ります。「さみしさ」は、人類の祖先に、生きのびるために備わった、欠かせない感情でした。
私たちの祖先は、今からおよそ440万年前、アウストラロピテクス=ラミダスの時代に、樹上生活から地上生活に移行して、直立二足歩行を始めたと言われています。
果物や木の実が豊富な森林ですが、気温が温暖化によって上昇すると、太陽に近い樹上より、地上のほうが、生活しやすくなります。さらに温暖化が進むと、森林の面積が減少し、人類の祖先は、サバンナでの生活を余儀なくされるようになりました。
けれども、大型肉食獣が闊歩(かっぽ)するサバンナにあって、牙もなく、分厚い毛皮もなく、四足動物ほど速く走れるわけでもない私たちの祖先は、脆弱な身を守るために、家族や仲間を作って生活を営むようになりました。
仲間と助け合い、協力し合うことによって、厳しい自然環境を生き抜いたのです。しかし、仲間が増え、共同体の存在が欠かせなくなると、今度は脅威の対象が、大型肉食獣から仲間へと、移行していったのです。
仲間を離れることは、死を意味した
そこには、脳の急速な発達が関与していました。樹上生活をしていた頃、人類の祖先は、果物や木のみを主食とし、オラウータンのように単独生活をしていたと言われています。それが、家族をつくり、複数の家族が集まった群れをつくり、最終的に100人から150人ほどのコミュニティをつくって、社会生活を営むようになりました。
集団で行う狩りは、単独ではできなかった大型動物の捕食を可能にしました。豊富なタンパク質を得て、また、多数の仲間との複雑な関わりを持つようになって、人類の脳は急速に大きくなっていきました。
脳が、共同体での生活に有利なように、他者の考えや、感情を理解すること、社会とのつながりを良好に保つ方向に、発達していったのです。彼らにとっては、仲間と共に生きることが、安心して生きることであり、仲間を離れることは、死を意味しました。
脳が発達して、社会的動物となった人類にとって、大型肉食獣に襲われること以上に、仲間と調和できないこと、仲間から疎外されることが、大きな脅威となったのです。それを避けるために、私たちの脳は、私たちに「さみしさ」という苦痛を与えたのでした。