金輸入で合法的に儲けられないか? シミュレーションしてみた
シリコンでできた腹巻きに……驚きの手口
実際に使われている密輸の手口はさまざまです。「粘着テープで足裏に貼り付けて隠匿」など単純なものだけではなく、「ブレスレットやベルトのバックルに偽装」するといった巧妙な手口も見受けられるそうです(財務省関税局の広報誌より)。
またA氏によると、
「僕が聞いた話だと、スパッツの下腹にあたる部分にポケットを作るんですよ。そこにスマホくらいの大きさの金地金を4個入れて、さらにスパッツを重ねて履きます。
そのままだといかにもゴツゴツしてて怪しいので、その上にシリコンでできた腹巻きを着ます。そうすると傍から見てもお腹が出てる人にしか見えないというわけです。触られても柔らかいですしね」
実際に密輸に関わっているのはどんな人たちかというと……。
「金密輸の実行部隊の年齢層は30~50代が多いですかね。中には家族ぐるみでやっている人もいるようです。犯行グループにもよるんでしょうけど、最近だと30代以上という年齢制限を設けてるみたいです。
もし刑事告発に発展しそうになった場合に、30代以上なら起業のためにお金がほしかったとか、あくまで自分の資金でやってるとか。組織性を匂わせない言い訳に説得力が出ます。組織的な犯行だとバレたら実行部隊よりうえの、資金の出所まで追及されますからね」(同)
免税範囲なら合法的に儲けられる!?
ちなみに日本では「持ち込む金地金の純度が90%以上」「重量が1キロを超えない」「その他の物品と合わせて免税範囲を超えない」という条件を満たせば「携帯品・別送品申告書」の記入は不要。つまり、非課税となります。
ということは、20万円分の金地金を携帯品として海外から持ち込み、国内で転売すれば消費税分1万6000円の利益を海外旅行のついでに合法的に儲けられる! とお思いのあなた。なんてコスいことを……もとい、わずかな利益だとしても本当に金輸入で儲けられるのか、やはり気になりますよね。
では実際に、シミュレーションしてみましょう。レートは3月20日時点のもので統一しています。
手順1.日本円→香港ドル
1HK$=13.54円 20万円=14771HK$(理論値)
国内で両替するとHK$は手数料が非常に割高なので、クレジットカードを使って現地でHK$を借り入れます。
20万円=14692HK$
手順2.金地金を香港で購入
1グラムあたり342.30HK$なので、20グラムの金地金を2つ購入。
14692HK$=20グラム×2(13692HK$)+おつり1000HK$
手順3.金地金を日本で売却
買い取り価格は20グラムあたり89500円 お釣りも相場通り両替すると、
20グラム×2(13692HK$)+おつり1000HK$=89500円×2+13540円
192540円で、-7460円の赤字が出てしまいました。
このように、そもそも現地通貨を用意する時や金地金を購入・売却するときに手数料が発生するので、結局は赤字になってしまうようです。金地金売却で儲けるなんて、そうやすやすと手を出せるものではなさそうです。
<取材・文/石井通之>