全米アニメ史上興収No.1監督が語る「20代はたくさん失敗したよ」
――『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(’11)を手掛けられたのは、『Mr.インクレディブル』と『インクレディブル・ファミリー』の間ですね。
バード監督:トム・クルーズが『Mr.インクレディブル』を観て、うちに遊びに来てくれたんだよ。それまで面識はなかったんだけど、話をしましょうと声をかけてくれた。それで会って、3~4時間と映画の話で盛り上がったんだ。トムは『Mr.インクレディブル』のアクションの演出が素晴らしかったと。だから声をかけてくれたんだ。
アメリカでは、いまだにアニメーションは実写に次ぐもので、アニメ映画監督は実写の映画監督に劣るといった偏見が、まだまだあるんだ。そんななかで、トム・クルーズという人は、実写だろうがアニメだろうが、演出は演出だと等しく評価してくれた。そのとき、「実写に興味はありますか?」と聞かれて、「もちろん!」と答えた。それが『ゴースト・プロトコル』に繋がったんだ。
トムは私を信じて守ってくれ、一緒に作品を作ることができた。そのときのスタントコーディネーターが、今作のヘレンの戦いのシーンで振り付けを担当してくれているよ。『トゥモローランド』(’15)でも一緒に組んだんだけど、アニメのファンでもあったから、今作で仕事をしてくれた。絵コンテのスタッフとアニメーターたちとともに、動きを作り上げてくれたんだ。だから、とても説得力のあるアクションになっている。
20代の頃は、もんもんとしていた
――監督は早くから活躍されていますが、キャリアの面で、20代はどんな期間でしたか?
バード監督:大学2年生のときからディズニーのアニメーターとして声がかかってやっていたから、スタートは早いよね。でももともと監督志望だったから、20代の頃はかなり悩んだ。脚本も書いていたし、いろんなアイデアを持っていたけど、それを実現できなくてね。もんもんとしていたよ。
23~24歳くらいのときには、オーソン・ウェルズが『市民ケーン』を監督した28歳より早くいいものを作るんだ! と息巻いていた。でもなかなかチャンスはないからね。結局、28歳のときに初めて監督をする機会を得た。
振り返ってみれば、自分が監督していない作品にいくつも関わったり、多くの失敗を経験したことによって、多くのことを学べた期間だったと思っているよ。
<取材・文・撮影/望月ふみ>
映画『インクレディブル・ファミリー』は全国公開中!