フォローしきれなくなった結果

　Eさんは勤務中に携帯を触るなど勤務態度も悪く、次第にスタッフたちからの文句が長尾さんに集中するようになりました。もちろんそれまで何度も注意をしてきた長尾さんでしたが、これ以上は難しいと判断し、ある行動に出ることにしたのです。

「特別扱いしたくないので他のスタッフにも言っていなかったんですが、Eくんの父親は僕の父の仕事の後輩だった人で、僕とも面識があるんです。僕が子供の頃はよく家に来ていて、宿題を見てもらったり遊んだりしてもらっていました」

　実はEさんが長尾さんのいるスーパーでアルバイトをすると決まったとき、Eさんの父親から「何かあったらすぐに連絡してほしい」と言われていた長尾さん。そして、そのときにLINEを交換していたのです。

見違えるような姿

　長尾さんがEさんの父親に事の経緯を連絡すると、これまでのEさんの態度を謝罪されすぐに注意すると言ってくれました。そして、その翌日、Eさんが出勤すると……。

「今までの彼とは別人では？ と思うほどしおらしく、そして注意やアドバイスも素直に聞いてくれるようになっていました。勤務態度の悪さも改善されて、スタッフの何人かからは、理由を問うようなLINEが届いたほどでした」

　父親の注意がよほど堪えたのか、今までとは真逆の真面目なアルバイトに変身したEさん。はじめこそスタッフに動揺が見られたものの、すぐに周囲と馴染み短期間の予定だったアルバイトを高校卒業まで続けてくれたそう。

「Eくんの父親は僕にはとても優しいお兄さんなのですが、きっと息子であるEくんにとっては怖い存在だったんでしょうね。今は大学生になって実家を離れているようですが、たまに地元に帰ってくるとスーパーにも顔を出してくれますよ」

＜TEXT／つる＞