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ブラック出版社を辞めて、海外でオンライン硬筆家になった女性が語る「レールのない人生」

学び

ブラック企業からの旅立ち

 退職願を提出してからも、退社日まで侮辱を受ける日々が続いた。通常の職務と関係のない倉庫整理を命じられ、後輩全員の前で「こいつは頭が狂っている」と吐き捨てられる。ゴミ箱をぶつけられ、髪を引っ張られたこともあったという。

「かなりブラックでしたね。辞めるまでに1年3か月かかりました。ただ、散々ひどい扱いを受けた後、『給料上げようか? 何が不満なんだ?』と手のひらを返したように優しくなって。次の段階になると『辞めます、のひと言だけで辞めようって、どれだけ勝手なんだ!』と追い詰められました」

 さとみさんはひたすら耐えた。目をつぶり、目の前に広がる真っ赤なナミブ砂漠を目指して。

「当時はとても悩みましたが、今振り返れば、もっと早く辞めればよかったと思います。ただ、散々ひどい扱いを受けたおかげで『見とけよ』と、その後の原動力になりました。他人の夢を笑うのは絶対にいかん、と心に誓いました」

色んな働き方があると知る

働く

※画像はイメージです

 そして実際、辞めたときに、3人ほどの上司から「お前は辞められていいな」と、こっそり言われたという。

「でも、実際に仕事を辞めて、これから何でも自由にできる状況になったとき、突然、恐怖心に襲われました。今までは、レールの上に乗った人生を歩いてきたので。自分の意思でどうにでもなることに怖さを感じました。32年間生きてきて、はじめてレールのない人生をこれから歩むんだと」

 さとみさんが日本を飛び出して、最初に訪れた場所がフィリピンだった。英語力強化のために5か月間、語学学校へ通い毎日みっちり勉強した。

「旅に出た目的のひとつが、“色んな働き方を知る”ことでした。以前は、終身雇用制度が素晴らしいと思っていたけど、本当にそうなのかなと疑問に思ったんです。世界中の若者はどうやって働いているんだろう。異なる働き方があることや、それがどんなものなのかを解明したかった。そのためにも英語は必須だなと思い、最初にたたき込みました」

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