「取引停止だ!」怒鳴り散らした専務が“小さく”なった、まさかのミス
ドヤ顔だった専務がまさかのミスを…!
そこへやってきたのは、別の取引先でした。その取引先は仕事を回してくれる元請会社だったため、専務の態度は一変。まるでマンガによく出てくる、出世のために上司にゴマをするモブキャラのように「へいこら」して、その男性の機嫌を取っていました。
「男性は、専務とは真逆の温和でやさしそうな雰囲気を持つ人でした。そして、先に来ていた2人を見て『少し来るのが早かったみたいだし、あらためましょうか?』と、専務に声をかけたんです。そしたら、常に自分が正しくて常識人や知識人だということひけらかしたい専務は、ニヤニヤとしながら2人に目線を移しました」
鮫島さんは、「嫌な予感がした」と言います。取引先2人は、ヘビに睨まれたカエル状態で、帰ったほうがよいかどうか顔を見合わせながらオドオド。そんな2人の姿を面白そうに眺めていた専務は、あとから訪ねてきた男性のほうに向き直り、ドヤ顔で口を開いたそうです。
「専務は『年賀状の名前の漢字を間違えるヤツって、どう思います? タガミさん(仮名)』と言ったんです。そしたら、声をかけられた男性は苦笑いを浮かべて、『いやぁ~、いつ言おうかと思っていたんだけど、僕の名前、“タウエ(仮名)”って読むんです。珍しい読み方なので、ファーストメールには、フリガナを書いて送ったんですが…』と言ったんです」
少しは専務もおとなしくなったそう
その瞬間、さっきまで叱責されて縮こまっていた2人は反射的に専務を見つめていましたし、ドヤ顔だった専務は、絵に描いたようにカチコチに固まっていたと言います。そんな状況のなか、1人だけニコニコと穏やかに笑みを浮かべていたのが、タウエさんでした。
「タウエさんは、『まあまあ、そんなに固まらなくても大丈夫ですよ。間違いは誰にでもありますし、そんなことでイチイチ目くじら立てたり、取引しないなんて言ったりするのは、器の狭い人間だと僕は思っていますから』そう言って専務に微笑みかけたタウエさんを見て、それはもう、スカっとしました」
タウエさんのおかげで取引先の2人も取引を解除されることはなく、専務も以前よりは少しだけおとなしくなったそうです。人の些細なミスを責めたり揚げ足を取ったりすることは恥ずかしいことであり、ときにこうして、恥をかくことにもなるということを忘れないようにしましょう。
<取材・文/山内良子 イラスト/パウロタスク(@paultaskart)>
特集[令和のスカッとした話]