不祥事が止まらない東芝。名門を転落させた3つの“事件”を解説
旧村上ファンドのエフィッシモ・キャピタルの台頭
第三者割当増資に応じた組織のひとつがエフィッシモ・キャピタルです。チームを率いるのが高坂卓志氏。高坂氏はかつてインサイダー取引で起訴された、村上世彰氏が率いた村上ファンドに籍を置いていました。エフィッシモ・キャピタルは東芝株を、一時15%超まで買い進めました。
「アクティビストファンド」とは、一定の株式を保有して、増配や自社株買い、その他の株主にとって有利になる提案を積極的に行う投資ファンドの一種です。厳しい物言いで取締役の退任など要求するアクティビストファンドは、東芝の経営陣にとって目の上のタンコブとも言える存在です。それはまさに、腫れ物のように大きく膨れあがってしまうのでした。
東芝は2020年2月に子会社の東芝ITサービスなどが架空取引をしていたとの調査結果を公表しました。またも不正取引が明るみになってしまったのです。しかし、東芝側は本社が指示したものではなく、取引先の担当者などが主導していたとして、再発防止策を打ち出して早期幕引きを図りました。
対立構図は今後も続くか
エフィッシモ・キャピタルはこれを見逃しませんでした。2020年7月の株主総会で、エフィッシモ・キャピタルの創業者である今井陽一氏など3名を社外取締役として選任する株主提案を提出したのです。東芝の弱点であるガバナンス体制の強化を軸として、株主に有利な経営体制を構築しようとしました。
この株主提案は43%の賛成があったものの否決。エフィッシモ・キャピタルはこの株主総会が適正に行われていたかどうかを疑問視します。その年の9月に第三者委員会を立ち上げて調査するよう東芝に要請。その第三者委員会が調査した結果が、冒頭の東芝と経産省が結託して外国人投資家に圧力をかけたというものです。
東芝は3度ガバナンス体制を疑われることとなり、アクティビストファンドの存在感は増すばかりの結果となりました。東芝が海外の投資ファンドであるCVCキャピタルパートナーズに買収を持ちかけた背景には、このアクティビストファンドの存在があります。
上場を保ったまま今のように経営を続けていれば、アクティビストファンドに翻弄され続けてしまいます。迅速で適正な意思決定ができないと判断したのでしょう。非上場化して既存の株主を排除し、投資ファンドと経営陣で株式を保有して正常な経営状態に戻そうとしました。
結果は上場維持となりましたが、アクティビストファンドとの対立する構図は今後も続くものと予想されます。
<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>