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引退した東京メトロ03系車両が、北陸鉄道で再デビュー。変身ぶりをルポ

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エクステリア「カラーリングをオレンジに張り替え」

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北陸鉄道の社章

 東京メトロ03系の先頭車はモーターを搭載していない。このため、北陸鉄道では、下り内灘寄り先頭車の03-100形を電装した。台車に装荷する主電動機は東京メトロ03系簡易リニューアル車(第1~8・35・36編成)の廃車発生品を使用。屋根上に搭載するパンタグラフは東京メトロ03系で使われていたものを移設した。VVVFインバータ制御については、新製したものを搭載している。

 屋根上の冷房機はオリジナルから、東京メトロ03系簡易リニューアル車の廃車発生品に載せ替えている。主電動機や後述の旅客情報案内装置も含め、オリジナルは1994年の新製時から使われているのに対し、簡易リニューアル車は2012・2013年に更新されたため、経年が浅いのだ。また、車体側面上部は東京メトロのハートMから北陸鉄道の社章に張り替えた。

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デジタル方向幕は列車種別、ワンマン運転、行先が表示される

 デジタル方向幕は東京メトロ時代の3色LED(オレンジ、グリーン、レッド)から、北陸鉄道初のフルカラーLEDに更新。日本語と英語(ローマ字も含む)が4秒ごとに表示される。

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JR西日本227系1000番台のワンマン表示

 注目は「ワンマン」の英語で、デジタル方向幕と車内の自動放送は「No Conductor」、車内の旅客情報案内装置は「conductorless Train」と案内する。北陸鉄道によると、数あるサンプルの中から、外国人に伝わりやすいものを選んだという。JR西日本が「Conductorless Train」と表示することも参考になったそうだ。

 沿線は降雪量が多いため、耐寒耐雪構造の強化、先頭車の前面にスノウプラウが設置され、雪をかき分けながら走行できる。

 このほか、運行番号表示器の撤去、北陸鉄道仕様の列車無線アンテナの設置、回生ブレーキの失効対策としてブレーキ抵抗器を設けた。

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無塗装車体の“冷たい雰囲気”をやわらげるためのアクセントカラーは、移籍後も健在

 搬入当初、車体のカラーリングは東京メトロ時代のままだったが、その後、シルバーの部分をコーポレートカラーのオレンジに張り替えた。アクセントカラーはダークブラウンとアイボリーのままで、東京メトロ時代の面影を残す。

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参考までに東京メトロの先頭車は、A線方向(写真の半蔵門線車両は渋谷から押上方面)の車両形式を「100形」に統一している

 号車表示は車内のみ撤去。車外については1・8号車の表示を残している。下り内灘寄り先頭車(03-100形)が8号車、上り北鉄金沢寄り先頭車(03-800形)が1号車となっているのは、東京メトロ時代の2011年に変更した名残である。

インテリア「ワンマン運転対応の設備に」

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北陸鉄道03系の車内

 車内は東京メトロ03系時代の雰囲気を踏襲し、ドアチャイムはそのまま、3色LED式の旅客情報案内装置は、オリジナルの全角13マスから、簡易リニューアル車の11マスに取り換えたうえ、引き続き使用される。特にワンマン運転時、無人駅では後ろの車両が締め切りでもドアチャイムが鳴動する

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03-800形の車端部

 ワンマン運転の設備として、各車両に運賃箱、整理券発行機、運賃表と広告の放映を兼ねた防犯カメラつきのLCDを設置。また、03-800形のみ車端部のロングシートを撤去し、車椅子スペースが設置された。冬季に備え、パネルヒーターも取りつけられている。ラッシュ時は立客スペースにもなることから、吊り手の高さを変える必要が生じ、新品に取り換えた。

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「内灘方」は03-100形を表す

 ドア番号の表示は独特で、下り内灘行きの進行方向右側が奇数、左側が偶数としており、キメ細かい。また、冷暖房使用時での車内保温維持のため、各車両の両端の乗降用ドア(1・2・5・6番扉)に半自動ドアボタンが設置された。新型コロナウイルスの影響で、まだ使用されていないが、使用時は中間の乗降用ドアが締め切りになるほか、ドアチャイムも鳴動しない。

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車内の半自動ドアボタン

 北陸鉄道によると、中間の乗降用ドアに半自動ドアボタンを省略した理由が2つある。1つ目は、有人駅では改札寄り車両の乗降用ドアから多くの乗客が入ること。2つ目は、無人駅では後ろの車両のほか、先頭車の中間の乗降用ドアが締め切りであること。無人駅での下車は先頭車1番前の乗降用ドアに限られているが、乗車については1番前と後ろで受け付けているのだ。

 このほか、室内灯のLED化、車両と車両のあいだを通り抜けるドアの撤去、新型コロナウイルス感染防止対策として、光触媒コーティング(抗菌、抗ウイルス)が実施された。

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