経営危機のワタベウェディング、「キャベジン」の興和に身売りした理由
リゾート婚以外の結婚式は資金の回収が見込める
2020年に世界的なパンデミックが深刻化すると、海外だけでなく国内の移動も制限されるようになります。リゾートウェディングの需要は蒸発したのです。
リゾート事業の売上高は63.0%の減少となりました。
近隣の結婚式場を予定していた場合、ほとんどが延期という選択をとります。すなわち、リゾート婚以外で契約した結婚式は、契約そのものが残っているために後で挙式費用が見込めるのです。
テイクアンドギヴ・ニーズは国内事業の売上高が65.8%減少して大打撃を受けています。しかし、優先株を発行(普通株よりも優先的な配当が設定されているものの、元金の返済義務はない資金調達方法)して、農林中央金庫などから30億円を手にしてコロナの急場を凌ぎました。
この背景には、多くの結婚式が延期措置をとっているため、需要回復とともに資金の回収(売上高の回復)が見込めることがあると考えられます。
子会社も次々と債務超過に転落
一方、リゾート婚の多くは渡航制限の見通しが立たないことから、ほとんどがキャンセルとなってしまいます。ここがポイントです。回復の見込みが立たないワタベウェディングは、資金調達がしにくい状況へと追い込まれてしまったのです。
なお、テイクアンドギヴ・ニーズのリゾート事業は81.4%減少していますが、これは2020年9月にリゾート事業を展開していた子会社グッドラック・コーポレーションを不動産業のケン不動産リースに売却したため。テイクアンドギヴ・ニーズは事態が深刻化する前に不採算事業をいち早く切り離しました。ワタベウェディングはリゾート婚が事業の核となっており、どうすることもできなかったのです。
しかも、ワタベウェディングは子会社でホテルメルパルクを運営するメルパルクが、2021年3月期に33億1600万円の債務超過に転落。同時期、もう1つの子会社目黒雅叙園も16億5100万円の債務超過となりました。国内の格安婚の受け皿だったメルパルクと、ハイクラスウェディングの雅叙園が相次いで債務超過となったのです。
宿泊・観光施設を運営する藤田観光が、大阪の結婚式場太閤園を売却して資金を手にしたことで話題となりました。ワタベウェディングも都内一等地に広大な敷地を持つ雅叙園を売却すれば良いとも思えますが、所有しているのは運営権のみ。不動産は所有していなかったのです。