大阪王将は「繁華街から、家の最寄り駅」へ。テイクアウト強化の新戦略を聞く
街全体が元気になってほしい
通常、客の声は一旦本部に集約されるが、それでは対応までに時間がかかることもある。大阪王将では、各店に一定の権限を与えて、迅速に対応できるようにもしている。
また店舗を中心にした“笑顔あふれる街づくり”も目指しているという。「大阪王将が基点となって、街全体が元気になってくれたら」と植月氏は考えているそうだ。
飲食店に限らず、これまでは“消費の場”がターミナル駅周辺に集中しており、夜間人口の多い郊外へ行くと、駅周辺が閑散としているところも多い。そういう地域を大阪王将が元気にしたいのだという。
「飲食店やチェーン店が少ない地域の店舗では、お客さまからは『やっと来てくれたね、ありがとう』というお声をいただくことも多いんですよ」
飲食店はよりハイブリットなものに
新型コロナウイルスの感染防止についても、さまざまな対策を講じている。中でも注目されるのが、独自に開発を進めてきた、光の力でウイルスや菌を分解除去する大阪王将オリジナルの光触媒コーティング「キングバスター」だ。奈良県立医科大学に研究を委託し、新型コロナウイルスを99.99%無害化することが立証されている。2020年6月以降、各店舗に順次導入されている。
コロナ禍が落ち着いても、飲食業界を取り巻く環境は以前の状態には戻らないだろうと植月氏は考えている。デリバリーやテイクアウトが一般化し、飲食業界は新しい“ステージ”に入ったと捉えているそうだ。
「飲食店が以前のように単に食事をしに行くだけの場ではなくなります。テイクアウトやデリバリーなどを組み合わせた、よりハイブリットなものになっていくでしょう」
冷凍食品や、これまで通販などで購入していた商品をピックアップする場としても機能していくだろうと植月氏。そこに客の利便性もリンクされ、店舗を“立体的”に活用する方法を見い出す必要があると話す。
「自宅で作って食べられるものは外食する必要はありません。外食でなければならないものは何かを考えていかなければならない時代になっています」
外食のスタイルが変わりつつある今、大阪王将ではさまざまな提案を考えているという。外食の楽しみ方に、新たな展開が大阪王将から生まれるかもしれない。期待も無限にふくらんでいきそうだ。
<取材・文/からあげライター 松本壮平>
【植月剛(うえつき・たけし)】
1995年4月、大阪王将食品株式会社(現:株式会社イートアンドホールディングス)に入社。大阪王将を主力とする外食事業にて本部長を歴任。2017年6月専務取締役を経て、2020年10月株式会社イートアンドホールディングス取締役兼株式会社大阪王将・代表取締役社長に就任