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女性社長のひらめき「ニーズを感じ取った」1万円でバンクシーのオーナーに

ビジネス

業界へのリスペクトを忘れず、信頼関係を大切に

 良くも悪くも閉鎖的な面を持つアート業界。ギャラリーに足を運んだことのある人ならわかると思うが、あの独特の雰囲気を持つ空間は初心者がおいそれと入れるものではない。そんな敷居の高い業界に、ANDARTの構想はすんなりと受け入れられたのだろうか。

「当初は、部外者が業界の慣習を壊してしまうのではないか、といった警戒心を抱かれることもありましたが、私たちの活動に理解のある業界の方に協力してもらいながら、小さな信頼を積み重ねていきました

 単にプッシュするだけでなく、たとえばギャラリーに対してはアートコレクターを紹介したり、先方へのメリットを考えながら行動すると、商流としての関係が生まれるんです。私たちは『YOUANDART』という主に若手アーティストの作品を扱うECも運営していますが、背景には若手アーティストの支援という目的があります。

 こういった現状の業界がリーチできてない部分をサポートしつつ、主要なアートフェアや展覧会、イベントには常に足を運んで顔を覚えてもらうことで、信頼関係を築いてきました。旧態依然な面も強く残っていますが、既存業界へのリスペクトを忘れずに学んでいくことを大切にしています

足で築いたアート業界とのつながり

ANDART

サイト上には有名作家の作品が多く並ぶ

 ANDARTが取り扱う作品は、ピカソ、ウォーホル、バンクシーといった超メジャー作家。これほどのビッグネームの作品をどうやって調達しているのかも気になる。

「起業前の準備期間から、個人のアートディーラー、ギャラリー、オークションハウスなどとの関係を丁寧に構築してきました。そういった中から取り扱う作品を仕入れています。基準としては、多くの方のニーズに応えられるようなキャッチ―さと、本質的なアートマーケットにおける価値の両方を兼ね備えていること。個人では手の届かない有名作家でも、共同保有なら1万円からオーナーになれますから。マーケットで堅い評価があり、資産性が期待できることも重要視しています」

 毎回、バンクシーやKAWSの作品のほとんどは完売となる人気っぷり。特に2021年2月に販売を開始したバンクシーの『BOMB LOVE』は開始1分で完売した記録を持つ。なお、オーナー権が完売となっても、『BOMB LOVE』を含む一部作品は会員間でのオーナー権売買ができる。

 それ以外にもANDARTでは草間彌生やゲルハルト・リヒター(※1)、ジュリアン・オピー(※2)などアート史に名を刻む大家の作品を取り扱っており、中にはまだ完売していない作品もある。

(※1)1932年生まれ。ドイツの抽象表現主義の作家。サザビーズのオークションで、エリック・クラプトンが所有していた作品が約26億9,000万円で落札されたことも。
(※2)1958年生まれ。シンプルな線画による人物画やポートレートで有名なイギリスの現代美術家。

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