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学歴を気にしすぎて失敗続き。対人恐怖症になった29歳男の告白

暮らし

自分の学歴や仕事を偽るように

 幸運にも腰の手術は成功し、高安さんの痛みは和らいだ。しかし、彼女を作ろうと勇気を出してお見合いパーティに参加した時のこと。他人への不信感と学歴を気にしすぎるあまり、自らの経歴を偽ったトークを連発してしまったそうだ。

「たまに女子と知り合う機会があっても、ついつい学歴や仕事で嘘ついちゃってね。IT系とか公務員とか、大卒が就く頭の良さそうな仕事だってことにしちゃう。だって一度、中卒だと正直に言ったら、態度を急変させた女性がいたんだ」

 普段は強気な発言で自分を大きく見せようとする高安さんだが、女性を前にすると空回りてしまうのだ。さらに、怒りの矛先は、女性だけでなく男性にも向かう。

女はみんな、金とスペックでしか男を見てないからね。見た目もキモくてダサい、大卒公務員の男どもがいい女と付き合って結婚してるってのは、結局そういうことでしょ」

女性との性交渉ができなくなる

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 自分への自信のなさに向き合えずに、他人を攻撃することでなんとか自分を保っているようだ。私が言葉に窮していると、高安さんはこう言ってのけた。

「いや、実際そこまで気にしてないけどね。俺のことを肩書きで見る女なんて、こっちから願い下げ。それに、ぶっちゃけ俺が本気になったら、セフレなんていつでもできるしね」

 さらに高安さんのコンプレックスを加速させたものが、もうひとつあった。腰の手術以来、女性との性交渉が上手くできなくなったというのだ。かつて長く付き合っていた恋人もいたが、彼女に振られたのは、これが原因だと高安さんは考えている。

「そっちのテクが発揮できなくなって、彼女の気持ちが離れたと思ってるよ。俺にベタ惚れだった彼女が俺を振るなんて、それしか考えられないからね。それに、結婚を考えるなら、大卒の男とって思ったんだろ」

 高安さんはその失恋以来、対人恐怖症となり、家に引きこもり続けている。誰しも自分のコンプレックスに向き合うのは恥ずかしいし惨めなことだ。それでも、コンプレックスを理由にして逃げずに、最初の一歩を踏み出して欲しいと思う。

<取材・文/緑川アイラ イラスト/カツオ(@TAMATAMA_GOLDEN)>

早稲田大学第二文学部卒業、ADHD、プロボクサー。5戦全勝で日本タイトル戦に挑むも敗北。発達障害者としての半生を赤裸々に綴った著書『ADHD女子革命』をKindleストアで発売中

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