年収800万円も“負け組”に?二分化する「年収ピラミッド」の背景
国家資格合格者や、大企業への新卒入社組など、一度レールに乗りさえすれば高年収が約束されていたはずの“勝ち組”たち。だが、そんな彼らも長引く不況や、新型コロナが追い打ちとなり、続々と高年収組から転落しているという。その崩壊の実体とは――?
淘汰される年収1000万円プレイヤー
かつて、日本の所得階層はきれいなピラミッドを描き、年齢に応じてある程度上の階層に上がれる仕組みだった。それが今では、大きく変わっていると、経済ジャーナリストの磯山友幸氏は言う。
「経済成長率が低い日本では、そもそも市場全体のパイが小さくなっています。当然、労働者の取り分も少なくなりますよね。全員の取り分が平等に減ったというよりは、年収800万円以上のポストが減り、椅子取りゲームに負けた人が転落しているのです」
“減った椅子”の最たるものが企業の管理職だろう。それには、産業構造の変化が背景にあるという。
背景には産業構造の変化
「景気がよく、モノを作れば作るだけ売れた製造業が盛んな時代は、販売・製造などに携わる人々を監督する『管理職』が必要だった面もあります。ところが、モノを作っても売れない現在は、オペレーションをするための中間層は少数でよくなった。一方、経営に携わる、ごくわずかな人間が何千万、数億円と稼ぐようになっているのです」
その結果、大半の年収800万円以下の労働者層と一部の超富裕層で階層が二分されるようになったと磯山氏は解説する。
「ただ、日本はこれからも人口が減っていくので絶対的に人手不足になる。それも、優秀な人が圧倒的に足りていません。これまで大量生産・大量消費だったのが、今は人々のニーズが細分化しているので、独自の専門性を磨いて顧客をつかまえられる人や新たなバリューを生み出す人は、上にいけるチャンスが増えるのではないでしょうか」
<取材・文/夏目かをる 山田剛志 鶉野珠子 武馬怜子(清談社) 橋本岬 図版/ミューズグラフィック>
【磯山友幸】
経済ジャーナリスト。早稲田大学卒。『日本経済新聞』記者、『日経ビジネス』副編集長を経て、独立。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』など