年収3000万円から失業危機に。コロナ打撃「パイロット・CA」の“懐事情”
国家資格合格者や、大企業への新卒入社組など、一度レールに乗りさえすれば高年収が約束されていたはずの“勝ち組”たち。だが、そんな彼らも長引く不況や、新型コロナが追い打ちとなり、続々と高年収組から転落しているという。その崩壊の実体とは――?
度重なる減便。給与が3割減ったパイロットも
新型コロナによって大きくダメ―ジを受けた航空業界。航空ジャーナリストの北島幸司氏は、花形であるパイロットの収入も落ち込んでいると指摘する。
「コロナ禍でも国内線は4割程度の減少でフライトをキープしていますが、国際線は需要が大きく減りました。年末年始の書き入れ時の感染拡大が大打撃となり、国際線全体のフライト時間は9割も減少しています。パイロットの給料は乗務時間で決まりますから、フライト時間が減れば、当然懐にも影響が出てくるでしょう」
ANA・JALに勤めるパイロットの場合、実際の搭乗時間にかかわりなく、50時間分の乗務手当てが保証されており、通常時の5割以下に落ち込むことはない。
ただ、5割フライトが減れば、乗務手当てが減り給与も3割減。給与1000万円前後の経験が浅い副操縦士の場合、現在は年収700万円程度の事例があるのではないかと、北島氏は推測する。
客室乗務員も厳しい状況に
それでも、日本の航空会社ではパイロットの雇用はしっかり守られており、失業の心配はない。
「生活苦があるとすれば、世界で働く派遣パイロットでしょう。彼らは機長であれば3000万円以上の年俸で雇用されますが、契約期間が終了すれば延長は保証されません。アメリカでの派遣パイロットはウーバーや、タクシードライバーを兼業していると聞いています」
また、パイロット以上に厳しい状況に追い込まれているのが、客室乗務員たちだ。彼らには時間保証もなく、月収が5割以上減っている人もざらだという。
元CAで、現在も航空業界に知り合いが多いという都内在住女性は「パイロットはCAとの結婚も多い。コロナで世帯年収が大幅に下がった夫婦もいます」と話す。
2020年、ANAは冬のボーナス全額カット、JALは8割減額に踏み切った。たとえ高収入のパイロットであっても、新型コロナという災難の影響は免れないのだ。
【北島幸司】
航空ジャーナリスト協会所属。ビジネスと旅行系WEBサイトや月刊航空雑誌で連載の執筆をする航空ジャーナリスト。コラムの執筆も行なっている。
<取材・文/週刊SPA!編集部>