元マクドナルド社長が“タピオカ屋”になったワケ「30年前のアップルと似ている」
10~20代の女性を中心に空前のブームとなったタピオカ。だがここ最近はブームに陰りが見えており、さらに新型コロナの影響でタピオカドリンク専門店の相次ぐ閉店から「タピオカブームの終焉」とも言われるようになった。
2015年に日本へ上陸して以来、国内のタピオカブームを牽引してきた台湾発のティーブランド「Gong cha(ゴンチャ)」。今回は同ブランドを運営する株式会社ゴンチャ ジャパン(以下 GCJ)の代表取締役会長兼社長兼CEOの原田泳幸氏に、タピオカブームの行く末やゴンチャが描くビジネス戦略について話を聞いた。
成長道半ばのゴンチャで社長になったわけ
これまでアップルジャパンや日本マクドナルド、ベネッセなど各業界で経営トップを務めてきた原田氏。なぜ、まだ規模の小さい会社であるゴンチャの経営に携わるようになったのか。
「マクドナルド時代の部下が、GCJの社長就任の話を持ちかけられていて、私のところに相談に来たんです。『じゃあ一緒にゴンチャを見に行こう』と店舗に足を運んだんですよ。そうしたら『この会社は伸びるぞ』と肌で感じました。
オペレーションのシンプルさや商品のクオリティ、そして何より私が1990年にアップルへ入社した当時の状況とそっくりで、将来性のある会社だと確信した。なので、元部下に『その話、前向きに考えたほうがいい』と助言しましたね」
しかし、人生は何が起こるか想像できない。結局、元部下である知人はこの話を受けなかったという。そればかりか、今度は原田氏自身にゴンチャグローバルの役員から、社長就任のオファーの話が舞い込んできた。その役員も、かつてのマグドナルド時代からよく知る間柄だった。
タピオカ屋からの脱却を目指す
「すでにゴンチャという会社の成長性や将来性が面接を受ける前から知っていたので、社長を引き受けることに迷いはありませんでしたね。今までの会社は業績を立て直すというフェーズから経営を行ってきましたが、ゴンチャはイチから市場を創造するフェーズ。アジアンティーカフェという業態のニーズを創造し、ゴンチャを日本にもっと根付かせたい。そんな想いを胸にGCJへ入りました」
原田氏がまず着手したのは“タピオカ屋からの脱却”だった。
「タピオカブームが終わったと言われますが、今後も一定数のニーズはあると思っています。現にゴンチャでもタピオカのトッピング率は8割を超えている。ただ『タピる』みたいな一種のファッション的な行動は、一過性の現象に過ぎず、タピオカ目当ての来店頻度は週に1、2回と伸びていません。そこで、タピオカに依存せず、もっと店舗に来たくなるようなメニューのバラエティを増やし、『若い女性が好きなタピオカ屋』というブランドイメージを打破し、新たな顧客価値の創造をすべく経営改革を行ったんです」