中国共産党が結成100周年。周辺国の「反中国テロ」で多難な前途
各地で武装勢力による襲撃が
7月には、SLAが2018年末に結成されたBLAの関連組織「Baloch Raji Ajoi Sangar(BRAS)」と共闘関係を構築したとみられ、安全保障の専門家などは、カラチがあるシンド州のSLAとBLAが地方から都市に活動拠点を絞り、中国やパキスタン政府の権益(政府庁舎や軍、警察など)を狙った攻撃がさらにエスカレートさせる恐れがあると懸念を示している。
最近では、2020年12月22日にパキスタン最大の都市カラチ近郊で中国人とその通訳が滞在していた車の展示場を狙った襲撃が発生。さらにその1週間前にも中国人が経営するレストランを狙った襲撃があった。
どちらの事件でも中国人は難を逃れたものの、「Sindhudesh Liberation Army(SLA)」を名乗る地元の武装組織が両事件で犯行声明を出し、「中国とパキスタン政府は中国パキスタン経済回廊(CPEC)プロジェクトに基づき我々の土地を支配している。我々は両権益を狙った攻撃を続ける」と警告した。
パキスタン固有の問題ではない
中国当局もこういった危険を懸念し、パキスタンを訪れる中国人に対して日々注意喚起を行い、中国政府関係者がカラチを訪れて地元警察と安全の徹底について深く議論しているとされる。
地元警察は「中国人は我々が示した安全規則を十分に聞かず、治安が懸念される地域でも自由に歩いている。我々は日本人や韓国人、シンガポール人、中国系アメリカ人などが武装勢力の攻撃対象になってしまうことを懸念している。武装勢力はアジア系を区別できない」と不満を示している。
しかし、今日の国際政治に照らすと、こういった中国権益を狙った攻撃や危険性は何もパキスタン固有の問題ではないだろう。中央アジアや南アジア、アフリカなどからも同じような声が聞こえてくる。中華民族の偉大な復興を掲げる習政権ではあるが、このような事例はボディブローのように効いてくるかもしれない。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>