2020年の“コロナ倒産”を振り返る。飲食、アパレル…生き残る企業の特徴も
生き残る企業に共通しているのは
ここまで紹介してきたように2020年はコロナによって多くの企業が打撃を受ける一年となった。コロナの影響を全く受けない業種の方が少ない中で、生き残る企業にはどういった傾向があるのだろうか。
株式会社森経営コンサルティング代表で、経営コンサルタントの森泰一郎氏は「『Cash is King』、つまり危機には現金が強いということが明らかになりました」と語る。具体的にはどういったことだろうか。
「多くの日本企業は好景気の中で、現預金を多額に貯めており、この現預金の保有状況を政治家や海外の投資家などから批判されることがありましたが、この現預金がなければ、今以上に多くの人の雇用が失われていた可能性があります」
厚生労働省が発表した内容によると、コロナ関連で見込みを含む解雇や雇い止めに遭った人数は7万242人(11月6日時点)。倒産する企業があれば当然職を失う人もいるのだが、森氏によると「現預金を多く保有していた企業では解雇が抑えられている」という。
日本の雇用環境が功を奏した
そして、日本企業の多くが現預金を保有していた背景にあるのが日本の雇用環境だ。
「海外のように、簡単に雇用の調整ができない日本は、海外と同様の経営理論で事業運営ができるはずがありません」
日本国内では非正規雇用が約4割を占めるが、その上でもまだ海外と比べると雇用の柔軟性はなく、それゆえに倒産数を抑えられたというのが森氏の指摘だ。
「リーマンショックの際も、海外の企業と比べて日本企業のダメージは少なかったのですが、今回のコロナショックでもこのことが当てはまったと言えそうです」
もちろん多くの企業が倒産し、多くの人が職を失ったことは見過ごすことはできないが、現状において数が抑えられている背景には森氏が分析する日本固有の状況があるのではないだろうか。多くの人が予想だにしなかった厄災が生じた2020年。1日でも早く状況が改善されることを願うばかりだ。
<TEXT/菅谷圭祐>