オーナー経営者は本当に左うちわか?資産50億円超でも簡単に株は売れない
企業は相次いで冬のボーナスカットや給与減を発表するなど、2020年は会社と労働者という関係を露骨に突きつけられた1年となった。
しかし、よく考えてみると、給与や会社組織、雇用の仕組みについて意外と知らずに働いていないだろうか? そこで、若いビジネスマンのため、「会社の基本」をプロに学んでいきたい!
会社の創業者は株を簡単には売れない?
組織マネジメント専門家の安藤広大氏が代表取締役社長を務める会社「株式会社 識学」は、創業から4年足らずでマザーズへの上場を果たし、現在の時価総額は110億円を超えている。
そのうち個人および資産管理会社で47.7%の株式を保有している安藤氏には50億円以上の資産があるわけだが、「創業者は簡単に株を売却できないの?」と素朴な疑問をぶつけてみた。
「創業者の株式売却は“経営へのやる気がなくなった”とネガティブ材料として投資家に捉えられてしまうので確かに売却は難しいですね。“社長がポンポン持ち株を売ってる”と認識されたら、ファイナンスや成長戦略にも悪影響が出てしまいます」
たとえこっそり売ろうにも、発行済み株式数の5%超を保有する大量保有者は、保有割合が1%以上増減した場合、「変更報告書」を提出する義務があり、金融庁の「EDINET」で開示される。
「社長の保有株式比率はある程度減らすべき」?
「売却は難しいんですが、僕個人として筆頭株主の自分と第2位株主である識学考案者の2人で50%超の株式を保有している今の状況はあまり好ましくないですね」とは、安藤氏。50%超の株があれば多数決で負けないから、何かと都合がいいのではないだろうか?
「持ち株比率が50%(2分の1)を超える株主は、株主総会の普通決議を単独で可決する権限を持っています。2人で意見を合わせれば、取締役の選任、解任をはじめとして、強引に社長の座に居座り続けることもできる。会社の意思決定のほとんどを自分でできてしまうわけです。それよりは“株主に選ばれないかも”というプレッシャーが社長にとっていいストレスとなりパフォーマンスにも繋がる。何よりパブリックカンパニーとして望ましいと思うんです」
「所有と経営を分離する」という考え方に基づき、安藤氏は「社長の保有株式比率はある程度減らすべきだと思っている」と語る。
「そもそもオーナー経営者は未発表事項も含め、自社のことを知っていますから、持ち株の売却には制約が多いです。でも、僕の持論では、持ち株比率を徐々に減らすのはアリだと思っています」
上場しても一挙手一投足を監視され、株主からは圧力をかけられ、オーナー社長で億万長者で左うちわとはいかないようだ。