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「本当の自分はこうじゃない」職場のあなたがそう感じてしまうワケ

学び

他人が求めていることをするのも悪くない

 さて、「本当の自分」に関して、重要な落とし穴がもうひとつあります。生得的な感情は自己イメージと他者イメージの合致を求めるのですが、私たちは自己イメージが先にあり、それを他者に理解してもらおうという手順で考えがちです。

 就職活動でも自己分析と称して、自分の強みを発見して、それを活かす仕事を探すという「やりたい仕事を見つける方法」を教わります。

 その方法には一定の意義がありますが、逆もあるのを忘れてはなりません。「他者イメージ」が先にあり、それを自分が引き受けるという手順です。やりたい仕事とも得意な仕事ともあまり思えない仕事であっても、他者の期待に沿って従事しているうちに熟練して面白くなることがよくあります

 このように、求められている仕事から、できそうな仕事を見つけるほうが、社会の要求に合った実用的な手順なのです。逆転の発想をした結果、生得的な感情が充実感を覚える可能性も高まります。

本当の自分を求めなければ、友人の幅も広がる

職場

 以上の知見から、冒頭の悩みを抱えた方への処方箋はこうなります。

・今の職場の仕事が順調ならば、自分に合っているのです。さらに、週末のボランティア活動で生き生きとしているのならば、また別の自分を表現できていてハッピーなのです。どちらも「本当の自分」です。

・職場では、週末のボランティア活動の様子を話して、別の自分を表明しましょう。すると同僚が週末の話をしてくれることで、思わぬ別の姿を知ることにもなります。

・画一的な「本当の自分」へのこだわりを和らげ、感情が充実感を覚える機会を増やしましょう。いろいろな自分があったほうが生きやすいにちがいありません。

 この考え方は、友人についても新たな視点をもたらします。友情とは本来、狩猟採集時代の協力集団の仲間に抱く親密感でした。だから、友人の友人はまた友人という一体感を引き出す感情なのです。あなたの友人が、あなたの嫌いな人と友人だと嫌な感じですよね。友情は、仲間集団を目指して進化したのです。

 ところが、生活が多様化している現代社会では、職場での友人関係と趣味の場での友人関係は別々で構わないのです。新しい友人を広げるということは、狩猟採集時代の協力集団を超えて、現代的な関係を築くことでもあります。

 感情のいい面を残しつつ、現代的な人間関係に合わせた友情を見いだしていきましょう。

<TEXT/工学博士 石川幹人>

1959年、東京都生まれ。進化心理学者、明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。大学で教鞭を執る傍ら、科学リテラシー教育や科学コミュニケーションの啓蒙活動にも力を入れている。主な著書に『その悩み「9割が勘違い」』(KADOKAWA)、『生物学的に、しょうがない!』(サンマーク出版)ほか多数

その悩み「9割が勘違い」 科学的に不安は消せる

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遺伝と心の関係を解き明かす進化心理学の観点から、石川幹人氏が悩みの解決方法を紹介、生きるのが少しラクになる一冊です。

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