6年間も旅と労働をくり返す29歳バックパッカー「年収180万でも何とかなる」
将来への不安はまだ感じない
「評価してもらえたのは正直にうれしかったですけど、まだ旅がしたかったので。『旅行なんて年を取ってからいくらでもできる!』と言う人もいますが、60代になってバックパッカーするのはキツいでしょうし、20代だからこそ見えるモノ、感じるモノもあると思うんです」
それはあるかもしれませんが働くのは年に6〜8か月程度。今年はコロナの影響で例外的に働き続けているとはいえ、例年なら収入の多い年で180万円前後。働いている期間は無駄遣いせずに給料の大半を貯金していますが、それは旅費のために一時的に貯めているだけに過ぎません。
これとは別に将来に向けた貯金などはないようですが、不安になったりはしないのでしょうか?
「持って生まれた性格なのかもしれませんが、僕ってポジティブなので。まだギリ20代ですし、なんとかなるかなって」
いずれ定職に就かなければいけないけど…
海外では1泊数百円のドミトリーと呼ばれるゲストハウスの大部屋で寝泊まりし、食事は地元民向けの屋台か安食堂。1日の出費は1500円程度の貧乏旅行で贅沢とは無縁です。
それでも「毎日楽しいですし、自分らしくいられます」と室橋さん。彼のように日本で短期間働き、稼いだお金を持って旅や長期滞在を繰り返すライフスタイルを“外こもり”と呼び、90年代後半ごろからこうした日本人が東南アジアには多くいるそうです。ところが、コロナによって海外旅行は当面難しい状況です。それについてどう考えているのでしょうか?
「今後何年も海外旅行できないなら考えますけど、さすがにそこまでないと思うんですよね。それにコロナのせいで海外に行けない分、働いている期間が長くなって旅の資金もいつも以上に増えています。この調子なら物価安の国なら1年くらいは働かずに海外に滞在できそうかなって。1年もいたら満足するかもしれないですし、これで最後って思えるかもしれません。いずれにしてもいつかは定職に就かなきゃいけませんからね」
本人なりに将来のことを考えているようですが、外こもりの中にはその生活から抜け出せずにズルズルと年を重ねてしまう人もいるといいます。彼がそうならなければいいのですが……。
<取材・文/トシタカマサ イラスト/パウロタスク(@paultaskart)>