ネット無料の賃貸物件は「回線が切れやすい」説。真偽を専門家に聞いた
新型コロナウイルスの感染拡大によって、社会のさまざまな部分で従来とは異なる点が注目されるようになっている。今回紹介するインターネット無料物件も、そうした存在のひとつだ。
これまで賃貸契約の人気条件になっていた無料ネット。しかし、テレワークやオンライン授業が盛んに導入される中、従来から抱えていた回線品質の悪さが露呈している。
今回の記事では、ウィズコロナ・アフターコロナ時代のネット無料物件について、「住みたい街ランキング」などの不動産統計を手がける株式会社リクルート住まいカンパニーで、住宅情報サイト「SUUMO」の編集長を務める池本洋一さんに話を聞いた。
無料インターネットは「タコ足配線」
――そもそも、ネット無料物件はどのように成り立っているのですか?
池本洋一さん(以下、池本):一般に「シェアード型」と呼ばれる回線方式を採用しており、マンションやアパートの入り口まで光回線を引いています。それを入居者でシェアして利用することにより、通信費を大幅に削減してネット代を無料にするという仕組み。
つまり、部屋ごとではなく建物単位で同じ回線を利用するので安いのです。イメージとしては、コンセントのタコ足配線を思い浮かべていただけると近いかもしれません。
――ただ、それゆえに通信速度が遅いとされています。実際、私は二度ほど共有回線の物件に住んだのですが、時間帯によってはwebブラウジングすらもたついてしまい、動画視聴などもっての他でした。
池本:結局、建物に引かれている回線を入居者でシェアして使うので、利用者が集中すれば回線のスピードは低下していきます。これがネット無料物件最大の難点なのですが、実はそのことをよく知らないで入居する人もけっこういます。契約時にそうした説明がない場合もあるのですが、いったん契約をする以上は「実態を調べてから物件を選んでほしい」と思ってしまいますね。
借主、貸主の双方にメリットがある?
――しかし、こうした欠点を抱えながらもネット無料物件は多くの人の支持を集めてきました。貴社発表の「2019年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」でも、「無料インターネット完備」の物件は設備満足度で第2位となっています。
池本:まず、借主にしてみればもはや水道光熱費と変わらない生活インフラの固定費を削減できるというのが大きなメリットになっています。また、貸主にとっても無料ネットの導入はバスルーム交換など他の設備に比べてリーズナブル。少ない投資でウケのいい設備を導入できるというメリットがあります。
ただ、調査によるとマンションよりもアパートへの入居希望者が無料ネットを好む傾向にあるんです。なぜだかわかりますか?
――一般にアパートは家賃が安いので、より固定費削減への思いが強いのでは。
池本:正解です。マンション入居者は比較的金銭的に余裕があるため「多少投資をしてでもよい回線を」と思うのに対し、アパート入居者は「1円でも固定費を削りたい」と考える傾向にあると考えます。