富士そば、北海道初進出を現地ルポ。限定「スープカレー味」も食べてみた
コロナ禍で始まった地域活性化の取り組み
コラボを先導したのが、ダイタンホールディングスの広報・工藤寛顕氏だ。富士そばサイドからの参画は、工藤氏ただひとり。本社からすべてを一任されて、出店にこぎつけた。
価格を最低限に抑えたのは工藤氏からの提案だった。配送コストを差し引くと、富士そばサイドの儲けは無きに等しい。採算度外視の背景には、今年から始まった「地域活性化」の取り組みがある。
「もともとは、東京五輪後の2021年に予定されていた取り組み。さらに高まるインバウンド需要を見込んで、富士そばでもご当地食材を提供しようと考えていたのです」
各店舗で名物を活かしたメニューが
ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪は延期に。世界経済は短期間のうちに大打撃を受けて、インバウンドどころではなくなった。全国各地の自治体や飲食店も窮地に立たされる。
それを受けて「富士そば」は取り組みを1年前倒しすることに。コンセプトも「地域活性化」の色合いが濃くなっていった。その一環として現在、富士そばの一部店舗では石川県輪島市のふぐや、東京都神津島村の明日葉を使ったメニューが提供されている。
「ビジネスにつなげるのは、もう少し先の話です。ネットワークを広げて、ゼロからイチをつくるのが最優先。楽しく、面白く。成功事例を重ねていくことから始めていきます」
北海道出店の初日は、想定を大きく上回る108人が来店。そばが売り切れて早じまいする盛況ぶりを見せた。まだまだ手さぐりながらも新たな一歩を踏み出した「富士そば」。これからも細くなが~く挑戦を続けていく。
<取材・文・撮影/名嘉山直哉>