アマゾン創業者が祖母を泣かせた失敗に学ぶ「人を動かす言葉」
取引先へのプレゼンやスピーチで自分の主張を通すには何が必要でしょうか。それは「自分のことば」でしっかりと話すことです。
「自分のことば」で人を動かすとは、どういうことか? 全米で活躍中の日本人プロフェッショナルスピーカーで事業戦略コンサルタントのリップシャッツ信元夏代に、いまでは世界水準の話し方となっている「ストーリーで語る」という話し方について解説してもらいます。ビジネスシーンで人の心を惹きつける話し方とは?
※本稿は『世界のエリートは「自分のことば」で人を動かす』(リップシャッツ信元夏代・著、フォレスト出版)を再編集しました。
アマゾン創業者のスピーチとは?
まず、ストーリーで語るとはどういうものなのか。アマゾン共同創業者・CEOのジェフ・ベゾスが母校の大学で卒業生へ向けたスピーチがあります。ジェフ・ベゾスが子どもの頃、夏休みをテキサスにある祖父母の家で過ごしたことから始まります。
10歳の時、祖父が運転する車で小旅行に出かけたのですが、後部座席に乗っていたジェフ少年は、助手席の祖母がずっとタバコを吸っているのに閉口したのです。
当時、何かにつけ計算をするのが好きだったジェフ少年は、祖母のためにタバコを1回吸うごとにどれだけ寿命を縮めるかを計算しました。そして自慢げに言ったのです。
「1回吸うごとに2分だとして、おばあちゃんはもう9年間も人生を短くしているよ!」
ジェフ少年はそんな自分の頭の良さと、計算ができることを褒められるだろうと、勝手に思い込んでいました。ところが突然、祖母が泣き出したのです。どうしていいかわからず困惑するジェフ少年。すると、祖父がハイウェイの側道に車を停め、車から出て、ジェフ少年についてくるよう外で待っていました。そして、静かにこう語ったそうです。
なぜベゾスの祖母は泣き出したのか
「ジェフ、いつかおまえにも、やさしくあることは頭が良いことよりも難しい、ということがわかるだろう」
このストーリーを語ってから、ジェフ・ベゾスは卒業生たちに向かって、こう切り出します。
「みなさんに話したいのは、才能と選択の違いです。頭が良いというのは才能です。やさしさは選択です」
「みなさんは才能にプライドを持ちますか? それとも選択にプライドを持ちますか? 16年前、私はアマゾンを作るアイデアが浮かびました」
すでに金融業界で働いていた彼ですが、この途方もないアイデアに夢中になり、妻も賛成してくれて、熟考を重ねた結果、最終的にやってみることを決断します。