ポスト安倍政権で「北方領土返還」はますます後退するのか
ロシアが北方領土に中国・韓国企業を誘致するわけ

北方領土問題には米国の影響も。写真はドナルド・トランプ大統領 © Gints Ivuskans
要は、北方領土返還は米国の軍事的影響力の範囲が択捉島まで北上することを意味し、北太平洋で影響力を維持したいロシアとしては絶対に避けたいシナリオである。北方領土はロシアにとっては米国との勢力圏争いの最前線でもあるわけだ。
話は変わるが、北方領土では近年、ロシアが中国企業や韓国企業の誘致を強化し、ロシアが発給するビザを受けて、多くの北朝鮮労働者が北方領土で働いている。2011年5月には、「独島領土守護対策特別委員会」に所属する韓国の国会議員3人も国後島を訪問している。ロシアにはどういった意図があるのだろうか。
おそらく、ロシアは中国や韓国が日本と領土問題で争っていることを鑑み、領土問題における“対日包囲網”を作りたい狙いがある。日本と領土問題を掲げる「中韓露」で連携されると、日本にとって厄介な存在となる。
中国や韓国からしても、北方領土に接近することには経済的な側面だけでなく、日本をけん制する意味で大きなメリットがあり、3か国の思惑は一致している。今後、人口減少に苦しむ日本にとって、領土問題、離島防衛の問題は安全保障上も大きな懸念材料になることだろう。日本の国防にとって最も大きな問題は少子高齢化と言われることもあるが、確かにマンパワーの減少をどう補っていくかは大きな課題だ。
時代の経過とともに北方領土への国民の関心がさらに薄まる可能性もある。ポスト安倍の時代において、日露関係が後退し、北方領土がさらに日本から遠のくことが懸念される。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>
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