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リスカ傷跡が手首に今も…20代「墨出し職人」の壮絶人生

学び

手取りは10万円台の「地獄」

 何ひとつとして福利厚生がないため、手取りの収入もよいものではない。

「額面上は月収30万円台なのですが、どんな月でも経費で最低5万円は消えます。5万円も切り詰めての額なので、満足に仕事をするには10万円は使いたいのが本音。さらに保険料、年金、各種税金などが差し引かれていくので、手取りにすると10万円台になってしまいますね」

「さっき『測量士の平均月収は未経験でも30万後半』といった通り、今の私はどう考えても買いたたかれているんですよ。もう絶望しかありません」

 山口さんから聞いた仕事の話は、もはや私の想像を絶するものだった。一言で表現するなら、まさに「地獄」というほかない。

3度の自殺未遂を経験

鬱病

 仕事を続けるうちに、山口さんは精神を病んでいった。そして、ついに限界を迎えてしまう。

「働き始めて1年が過ぎたころ、ただでさえ絶望していたところに恋人と別れてしまったんですよ。原因は色々ありましたが、私の休みが定まらないので予定を合わせられないのは大きかったですね。これで、『もうお先真っ暗だ……』としか思えないようになりました。『もう死のう』と思い、自殺に向けた準備を始めていきました。ただ、やっぱり自分一人だと決意が鈍ってしまうので、気心の知れた仲間たちにLINEで打ち明け、覚悟を決めました

「自殺」というと、衝動的なものというイメージがあるかもしれない。しかし、山口さんは確実に死ぬべく、情報収集を重ねていった。

「『絶対に死ぬ!』という強い気持ちがあったので、何度も自殺を試みました。まず、ある漫画で読んだ『袋をかぶって窒息死する』という方法を試しました。自分の身体を何十本もの結束バンドでぐるぐる巻きにし、頭に袋をかぶってガムテープで固定。そして両手を後ろに回して金属製の手錠をはめ、窒息死を狙いました。期待した通り死ぬほど息苦しくなったのですが、身体を固定していた結束バンドが、火事場の馬鹿力でほどけてしまったんです。それで失敗しました」

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