bizSPA!

苦境のHISが始めた“オンライン海外旅行”を体験。予想外に人気のワケは

ビジネス

5月末時点で6000名参加の人気企画に

ツアー

スーパーマーケットで販売されているミャンマーの物産品

 もとは4月の緊急事態宣言が出されてから、StayHome中でも楽しめる特別企画「#うちで過ごそう」に端を発するという。

「政府が緊急事態宣言を発令したことで、国内外のバッケージツアーなど人を移動させる観光事業が全てストップしました。特にGW(ゴールデンウィーク)前だったので、日本人の多くが旅行に出かける時期ということから、会社にとっても大きな経済的損失だった」

 しかし、旅行会社として今できることは何か模索していたときに、HISのアメリカ法人から『オンラインツアーを開催する』と連絡があったんです。自宅で時間を過ごす機会が多い中、どうにか観光従事者と旅行者の関係性維持を目的に、現地のガイドや提携施設などネットワークを駆使して実施しました」

 初めは急な企画だった「バーチャル・ツアー&オンラインセミナー」だが、無料開催に踏み切ったこともあり、蓋を開けてみれば予想以上の反響だったという。

「ニューヨークやロサンゼルスなど、日本人に人気の観光都市へ“行った気になれる”ツアーや、現地で活躍するダンサーやアーティストといったパフォーマンスによるコンテンツが、口コミで広がっていきました。緊急事態宣言延長に伴い、企画も5月31日までコンテンツ拡充や催行本数を増やして実施したところ、約6000名が参加する規模に成長しました」

6月からオンラインツアーの有料化へ

英語 旅行

※イメージです(以下同じ)

 困っている全ての「観光従事者」の顧客接点との共感とファンづくりを継続させるために、6月以降は有料化を行い、新たに「#ふたたび美しい世界へ」という企画で再スタートしたのだという。

「アメリカ法人の成功を皮切りにカナダやメキシコ、南米をはじめ、世界各国の国と地域に横展開していきました。これまで観光産業を中心に置いている世界36か国、約500のコースを催行し、計1万5千名以上(7月末時点)がオンライン体験ツアーに参加しています。参加費用は、無料のコースもあれば、1000円のものを主流としつつ、中には世界で活躍する有名シェフのお料理セミナーと食事を味わえるツアーには18500円のものまで幅広く提供していますが、有料コースで参加数が多いのは個人のスキル・知識・経験を磨くといった自己啓発系のコースが人気です」

 ただ、気になるのが無料と有料との差別化だ。特に、無料であれば旅好きのYouTuberが上げている動画を見るだけで詳しくなれそうな気もする。三浦氏は「Youtuberやインスタグラマーの動画は面白くて見応えもあるが、あくまで動画で紹介した場所をなぞることしかできないのが難点」とした上で、次のように説明した。

「オンライン体験ツアーでは、現地在住の詳しいガイドが、観光目線でおすすめ情報を教えてくれ、Zoom上ではチャットを使ってガイドへ質問もできる。ローカルのスタッフやレストラン、ホテル、旅行事業者などの繋がりを生かして、観光業に携わる企業だからこそのコンテンツを提供していければと思います」

おすすめ記事