新社会人よ『半沢直樹』を“おっさんの話”と一蹴するなかれ/常見陽平
「おっさんの話」と一蹴せず観てほしい
ただ、単なる一人のビジネスパーソンのサクセスストーリーのように扱われてしまうことは少し不安だ。『半沢直樹』とよく比較されるのが、2020年で連載開始から37周年を迎える人気漫画『島耕作』のシリーズだが、実際に物語を読んでみると必ずしも順風満帆とはいえない。
今や、70代で相談役にまで上り詰めた島耕作も、じつは、上手く出世街道を歩んでいたといえるのは『課長 島耕作』くらいだった。作中では、レコード会社へ飛ばされたり、東南アジアへ飛ばされたりと彼もまた会社の出世争いで幾度となく憂き目に会っているのだが、コロナ禍で揺れる現代にあっては「とはいえ、大企業の一員なんでしょう?」とそっぽを向かれてしまうのは怖い。
『半沢直樹』も島耕作と同じように思われてしまうかもしれないと懸念はあるが、働いている人すべてが味わう理不尽さなど、必ずや誰もが共感する部分を見つけられる作品でもある。
このサイトの読者は若い世代が中心だろうが、ぜひ「おっさんの話」と一蹴せずに観てほしいものである。
<TEXT/働き方評論家 常見陽平>
※1)バブル後最安値はリーマンショックを受けた2008年10月28日の6994円90銭(2020年7月14日時点)