サントリー、消毒用アルコールの無償提供も。コロナ後も堅調は続く?
新型コロナウイルスの猛威から徐々に日常生活へ戻る動きが出ています。しかし、医療機関では引き続き気を抜けない日々が続いており、防護服や消毒液などの各種医療物資の不足が続いている状況です。
その中で、大手飲料メーカーのサントリーは3月末に米国・欧州での消毒用アルコール生産を表明し、続いて4月中旬には日本国内でも消毒用アルコールの生産および無償提供を開始しました。
他にも、サントリーはインターネットを活用した食券先払いサービス「さきめし」運営元のスタートアップ企業と提携して、5月25日から「支払い手数料10%の負担」や「飲食店への寄付金の募集」を実施し、新型コロナウイルス流行収束期の経済支援を見越した飲食店支援にも乗り出しています。
収束後を見越した支援を表明している企業はまだ限られており、サントリーの事例はとても良いと感じました。では、サントリーはなぜこのようなことができるのでしょうか。公開情報から読み解いていきましょう。
創業家のエッセンスが詰まった企業精神
サントリーは1899年創業(当時は寿屋)と、121年もの歴史があります。日本のみならず欧州・アジア・オセアニア・アメリカと全世界的に拠点を持ち、有名商品だけでも「角瓶」「トリス」「モルツ」「伊右衛門」「BOSS」などと数えきれないほどです。日常生活においてスーパーやコンビニ、自販機でサントリー商品を見かけない日はないでしょう。
なお、サントリーは長らく「非上場企業の代表格」と言われていましたが、清涼飲料水事業を担う子会社の「サントリー食品インターナショナル」が2013年に東証一部に上場しています。通常、持株会社制の場合は、持株会社(この場合はサントリーホールディングス)を上場させるのが一般的ですが、創業家(鳥井家・佐治家)の意向を踏まえた結果、非常に珍しい上場形式になっています。
そのため、現在も創業家の意向が強い傾向にあり、グループ企業理念にも創業家のエッセンスが詰まっています。特に「わたしたちの価値観」としてまとめられている「やってみなはれ」「利益三分主義」という言葉にその姿勢が表れていると感じたのでご紹介します。
創業者の口ぐせ「やってみなはれ」
「やってみなはれ」は創業者・鳥井信治郎氏の口ぐせが由来です。これは言葉の通り「まず実行してみる」というチャレンジ精神を示しています。
また、「利益三分主義」は「事業で得た利益を、『事業への再投資』だけではなく『お得意先・お取引先へのサービス』や『社会への貢献』にも役立てる(=利益を3つに分ける)」という考え方です。
したがって、冒頭で紹介した「消毒用アルコールの生産」や「飲食店支援・寄付金拠出」の事例も、社会貢献に役立ち、得意先・取引先への貢献にもなる(※サントリーの場合、飲食店など店舗への卸も業務に含まれています)ことをまずやってみた、という理念に忠実な行動であると言えます。