そこで拾ってもらったのは、レコード会社。最初は月給8万円のADとして働き始めて1年が経った頃、知り合いの方から「自分の店を出さないか」という話をいただきました。それは花街でバーを開くという話で、願ってもないチャンスでした。

「3000万円なんかあっという間になくなっちゃう」

栄藤仁美さん

　さらに、昔からお世話になっていた方に保証人になっていただけたことで、3000万円の借金をして、17歳で初めての起業を経験することになったんです。

　月給8万円で3000万円もの借金ってヤバいですよね。不安がいっぱいで、ドキドキして夜も眠れないし落ち着かない。お店を出すと、内装などのハード面や従業員のお給料まで、どんどんお金がかかって、3000万円なんかあっという間になくなっちゃう。

　レコード会社もバーも、仕事が忙しくなるのは夜が多かったんですね。昼間にもなにかして稼がないといけないと思って、いろいろ探していたなかで、ある学生団体と出会って。そこが現在の大学ミスキャンパスのイベント「Miss of Miss」の前身にあたるイベントをやっている学生サークルでした。

　当時の関西は学生サークルのイベントがとにかく盛んだったんです。 クラブイベントやパーティをやっていた子たちが、各大学の公認を取りに行って、大きなイベントにする計画をたてていたところに、私も加わって。スポンサーを探したり、ドレスを借りたりして、2000万円規模のイベントになったんですね。

「東京ガールズコレクション」P村上さんとの出会い

photo by Tofudevil

　そのイベントに、当時大人気のモデル・益若つばささんをお呼びしたら、事務所のマネージャーさんと一緒にいらっしゃったのが、人気イベント「東京ガールズコレクション」のプロデューサー、村上範義さん。

　たまたま名刺交換させていただいたときに、「君、面白いね」って喜んでもらえたのを覚えてます（笑）。

　そこから交流が始まって、東京ガールズコレクションのお仕事をさせてもらうようになりました。最初は村上さんのアシスタントから始まって、徐々にイベントに出演するモデルさんとのコラボ商品の企画や、ファッションやスイーツのオリジナル企画を担当するようになっていきました。

日本初のゲーム音楽プロオーケストラを手がける

　それらの経験をもとに、現在はさまざまなコンテンツの可能性を広げるプロデューサーとして、いろんな分野の人材をつなげる仕事をしています。そのひとつが、日本初のゲーム音楽プロオーケストラ「JAGMO」のプロデュースでした。

　数あるアマチュアオーケストラだったJAGMOの知り合いから「とあるゲームの版権が降りないから、演奏できない」と相談されたのが、関わり始めるきっかけでした。

　多くの演奏会を開催するだけでなく、NHKホールでの演奏が NHK BSプレミアムで『シンフォニック・ゲーマーズ〜僕らを駆り立てる冒険の調べ〜』『シンフォニック・ゲーマーズ2～よみがえる英雄たち～』として放送されました。

「目指したのは起業家じゃなくて、事業家」

　小さい頃は、テレビやゲームを禁止されていたので、いまはゲームが大好きなんです。仕事でこういったコンテンツに関われるのが嬉しいですね。

　私が目指したのは起業家じゃなくて、事業家。たくさんのコンテンツや事業、人とのふれあうことからいろんな革命を起こしていきたいんです。就職だけがすべてじゃなくなっていく時代、これからは自分自身の人脈やスキルがお金を稼ぐポイントになっていく。

　コンプレックスの塊だった私が、これまでにたどった道を記すことが、誰かの励みになるとしたら、このうえなく嬉しいことだと思います。

＜TEXT／栄藤仁美　構成／森祐介＞

【栄藤仁美】1989年、京都生まれ。京都の花街で、老舗お茶屋の跡取りとして生まれるも、舞妓になる道を絶たれ、起業。17歳で3000万円の借金を背負うが数年で完済。現在は飲食業を経営する傍ら、「東京ガールズコレクション」や、日本初のゲーム音楽プロオーケストラ「JAGMO」のプロデュースなどを手がけていた。「ミスiD 2017」では安藤美冬賞を受賞。6月10日（日）に渋谷ロフト9にて開催されるイベント「40代で後悔しない！20代で本当にするべきこと」に登壇