文系でもプログラミングはできる。実技コンテストを主宰する社長に聞いた
IT技術の発展に伴いIT人材(システムエンジニアやプログラマーなど)の需要が年々高まっているのにもかかわらず、IT人材不足が深刻だ。経済産業省によれば、2030年には実に45万人ものIT人材が不足するとの試算が出されている。
世界的に見れば、米国のGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)や中国のBATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)などの世界経済を牽引するIT企業を中心に、人材獲得が激化している状況だ。
いかにIT人材を確保するかが、日本の産業活性化に繋がると言っても過言ではない。そんななか、プログラミングスキルをコンテスト形式で評価する「競技プログラミング」の存在が注目を集めている。
今回は、世界3大競技プログラミングコンテストのひとつである「AtCoder」を運営し、数々の競技プログラミングコンテントで優勝経験を誇る、AtCoder株式会社代表の高橋直大氏に、日本のプログラミング教育の現状と課題を伺った。
野球からプログラミングへ
まず、高橋氏のプログラミングとの馴れ初めを伺ったところ、「高校の2年まで野球部に所属していたが、肘を壊したことをきっかけに辞め、友人がいるパソコン研究部に入った」ことがきっかけと話す。
「プログラミングは、中学3年の頃の技術科の授業でやった80byteのプログラムを作ったくらいで、興味はありましたが、それ以上は取り組んでいませんでした。
しかし、高校3年の時に『SuperCon2006』という競技プログラミング大会に部員と応募することになり、なぜか自分も参加することになったのです。1か月の中で1問を解くという大会だったため、『猫でもわかるプログラミング』というWEBサイトを参考にしたり、周りに聞いたりしながら自力でプログラムを組んでいました」
ひょんなきっかけで参加した競技プログラミングコンテストだったわけだが、決勝まで残り、結果として6位入賞を果たす。
「初の大会にしては良い結果が残せて『自分はプログラミングに向いているかも』と思うようになった。そこからプログラミングにのめり込みましたね。
当時は競技プログラミングをやろうとすると、海外のサイトしかなく、英語を読解しなくてはならなかった。こんな面白いものをもっと広めるには『日本語で競技プログラミングができるようにすればいい』と思い、自分でプログラミングコンテストを開催するようになったのが、AtCoderを立ち上げた経緯です」
情報系以外の学生もIT人材になれる
AtCoderは全世界で約18万人の競技者が登録しており、日本で唯一、毎週コンテストを開催している。高橋氏は、自ら競技プログラミングを運営する立場から、現在のプログラミング教育の課題について次のように分析する。
「これは自論ですが、ITエンジニアになるのは大学の情報系の学部に所属する人がほとんどだと思っています。でも、これでは明らかにIT人材不足なわけで、文系など情報系以外の学部の人がエンジニアになれる道を作らないといけない。
一方で、ITが好きであれば、勉強すればいいわけですが、『働き口がないからエンジニアになりたい』と言う人も一定数いる。例えば数学や物理、化学などを専攻する人は、先生か研究者になる道しかないですが、AIやプログラミングの技術を身につければ、エンジニアとして活躍できる素養があると考えています」