「中国人は入店拒否」新型コロナで、飲食店の対応は違法になる?
新型コロナウイルス(新型肺炎)の患者数は日を追うごとに増えており、もはや他人事とは言えない状況になりました。横浜港に停泊中のクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号でも、陰性の乗客の下船が始まっていますが、一時は乗客の持病の薬など必要な医薬品不足が深刻な状況になっていました。そして一部の飲食店が、中国人の入店を拒否する張り紙を出し、物議を醸すような事態に。
中国人であることを理由に飲食店への入店を拒否するのは違法にはならないのでしょうか? また、クルーズ船の乗客で薬が足りなくなり、持病が悪化した場合は誰の責任になるのでしょう?
今回は、新型コロナウイルスにまつわる法的な問題について、弁護士・公認会計士の資格を持つ後藤亜由夢さんにお話をうかがいました。
「外国人だから入店禁止」は人種差別
――新型コロナウイルスの広がりを受けて、中国人の入店を拒否する飲食店が出てきました。これは法律的には違法にはならないのでしょうか?
後藤亜由夢(以下、後藤):外国人であることを理由に入店拒否をするのは、人種差別として違法となり、損害賠償の対象になる可能性があります。
まず、飲食店やホテルはあくまで「私人」であるため、契約自由の原則や営業の自由があり、取引先を選ぶことができます。ですが、取引をしない理由が単に「相手が外国人だから」であった場合、憲法に違反する不当な人種差別となる可能性があります。
憲法14条1項では「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とされています。国と国民の関係についての規定ですが、例外的に店舗と客という私人間でも適用され、かつ日本にいる外国人にも一部適用されると考えられています。
世間の風評を鵜呑みにするのは危険
後藤:ただ、たとえば特定の病気に感染している可能性が高い(と言われている)外国人を予防のために断ったのなら、それは飲食店やホテル側において、従業員や他の客への感染防止という正当な理由があるため、契約自由の原則や営業の自由が優先し適法といえるでしょう。
もっとも、本当に外国人がコロナウイルスに感染している可能性が高いかどうかもわからず、単に世間の風評などを鵜呑みにして一括りに「外国人だからコロナウイルスに感染している可能性が高い」と決めつけ、入店を断るのは、やはり差別的な要素が強く違法とされる余地もあるかと思います。