bizSPA!

片道1時間半かけても「実家暮らしを選ぶ」24歳男の電車通勤術

学び

毎朝行われる椅子取りゲームに“ライバル”が

 座ることに意欲を燃やすようになった梶本さん。マナー違反であるとはわかっていても、高齢者が近くに来ると寝たふりをしてしまうそうです。

「『よくないな』と思っているのですが、僕は毎朝片道1時間半以上をかけて通勤しているので、座っていられる時間は本当に貴重なものでして……」

 そんな彼ですが、最近同じ通勤時間帯にライバル的な女性が現れたそうです。

「乗換駅で並んでいると、いつも同じ列に並んでくる女性がいるんです。野暮ったい黒ぶち眼鏡を掛けていて30歳前後ですね。乗車ドアが開くと、すごいスピードで空席を探し出して、ちょっとした隙間があれば、どんなことがあっても割り込んで座るんです。これには驚きました。

 しかも一見、か弱そうな容姿をしていますが、さりげなく周囲をヒジでけん制するんです。そこで苛立ったら最後、冷静な判断をしなければあっという間に空席をかっさらっていくんです」

座れると謎の達成感に包まれるように

駅構内の様子

 昨日は1席分の空席をいち早く見つけ、タッチの差で座れました。彼女に勝って座れた日は謎の達成感に包まれます」

 この達成感がエスカレートし、「改札を1番に通りたい」という欲求に繋がっていったそうです。梶本さんは終点に着くと、ダービー馬のように一目散で改札を目がけて走るようになったというから不思議なものです。

「僕が走ると、なぜか釣られて走ってしまう男性もいるんですよね。リードした状態で背後をチラ見しながら改札を通り、『僕が1番だ』って気分に浸って出社できるんです」

 そう誇らしげに語る梶本さんですが、駅構内を走るのは危険ですし、意味のないレースに、虚しくなることも多々あるそうです。お金は貯まるとはいえ、日々の通勤で継続的にストレスを感じるのであれば、さっさと会社の近くに住んだほうが良いのかもしれません。

特集・私の“痛勤ラッシュ”レポート

<取材・文/池守りぜね>

出版社や、web媒体の編集を経て、フリーライターに。趣味は子供と一緒にプロレス観戦。ライブハウスに通い続けて四半世紀以上。家族で音楽フェスに行くのが幸せ

12

おすすめ記事