田中圭主演の恋愛映画、今泉力哉監督に聞く「上京前、吉本NSCに通っていた」
商業的でも、魂を売ってはいない(笑)
――監督が映画ファン以外からも広く認知されるようになったのは、やはり『愛がなんだ』だと思います。監督もお話されたように、答えの出ない作品だと思いますが、それがこれほどヒットしたのはどう受け止めましたか?
今泉:嬉しかったですよ。「奇跡だ」みたいなことを結構言われましたけど。地味というか、あの題材であれだけ広がっていったのはすごいと言われました。でも自分はヒットしたときも割と冷静だったんです。自分自身、やっていることは変わってないので。だから『愛がなんだ』がヒットして一番よかったのは、今までの僕の映画を観たことない人が、これまでの作品も観てくれるなということ。観られて恥ずかしいものは作っていないし、「一緒でしょ?」っていう(笑)。
――とはいえ、現在は田中圭さん主演の本作のように、一般的に広く観られる作品も手掛けられています。ご自身のなかで変化は感じますか?
今泉:自分は無理してやっている作品がひとつもないんです。幸せなことに。大きな規模になった『アイネクライネナハトムジーク』も、『mellow』もこのあとに続く『his』も。下北沢映画祭に依頼されて作ったとても小さな映画『街の上で』(劇場公開決定)も。どっちもやりたい。
商業的な映画をやるようになっても、魂を売ったみたいなのは全くないですし(笑)、それはできない。あと『愛がなんだ』のヒットで、どちらかというと分かりやすさよりも深さに向かった日常劇を、お客さんがちゃんと面白がってくれることは希望だと感じました。同時にそういうものが今まであまりないというのも感じたので、自分が信じている温度の芝居のものを、ちゃんとやっていきたいと思っています。
<取材・文/望月ふみ>