フリースタイルの理想は「くだ巻きおじさん」人気ラッパーに聞く
おじさんは“フリースタイル”
――フリースタイルをやってみたい、モノにしてみたいと思う読者もいるかと思われるのですが、ラッパーとしてそういった方々へ伝えられるコツはありますか?
黒ぶち:楽しみたいなら「自分の言葉をそのまま吐き出す」というのが1番ですね。とはいえ、日常生活では自分の思ったことを素直に吐き出すのは難しいかもしれないんですけど、じつは、居酒屋やバーの隅っこでクダを巻いているおじさんとかは、本質的にはフリースタイルに近いんですよ(笑)。
ある意味でいえば、自分の思いや気持ちを言葉に代えることで浄化させたり、頭や心を整理できる手段としても活かせるはずだし、よく言われる「フロウ(歌い回し)」や「ライム(韻)」といった方法論にとらわれず、まずはシンプルにとにかく吐き出してみてほしいなと思います。
どうせやるなら好きなモノの方が続けられる
――番組やイベントへの出演、自主音源の制作などに精を出す現在から先へ、将来的にどのような展開をしていきたいですか?
黒ぶち:やはりヒップホップ界に生きる一人として、より一層「ポピュリズム」を持たせられるように貢献していければと思います。その中で、脱サラしてラッパーになった立場としても、自分自身の可能性をどこまで見せつけられるかも課題にありますね。
未来は結局、どうなるか分からないんですけど「何だよコイツ、サラリーマンにまた戻ってんじゃねえか」と言われないように、自分を律していかなければと強く肝に命じています。
僕の曲は不思議と同世代からの支持が多い傾向にあるんですけど、今の時代、食べるためには「好きなモノに没頭して稼ぐ手段もあるよ」と伝えていきたい。全員が理想的な環境に必ずしも身を置けるわけではないだろうけど、どうせやるなら好きなモノの方が続けられると思うんですよ。
自分は大手術をするほどのケガがラップ1本で生きようと決断する大きな転機になりましたが、いっそ、何かでケガしてみたら、人生は切り開けるんじゃないかなと思います。
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ふとしたきっかけから、自分心にあったラップへの気持ちと一心に向き合おうと決断したTKda黒ぶちさん。フリースタイルをひとつの武器として、音楽への愛を胸に今後も活動の幅をよりいっそう広げていくことでしょう。
<取材・文・撮影/カネコシュウヘイ>