フリースタイルの理想は「くだ巻きおじさん」人気ラッパーに聞く
『フリースタイルダンジョン』も足がかり
――ヒップホップ界でいえば30代はどの辺りのポジションになるのでしょうか?
黒ぶち:僕らの世界でいえば中堅どころだとは思いますが、一方で日本のエンタテインメント業界でいえばまだまだ若手だなと思ってるんですよ。
それこそお笑い界でいうと、親交のあるとろサーモンの久保田(かずのぶ)さんがM-1グランプリで優勝したのが2017年の38歳でしたし、盤石な地位を築いて活躍されているのは、40代の方たちばかりなんですよね。
ヒップホップ界でいえば、バトルをきっかけにステップアップしていった先輩たちがたくさんいるので、まずは『フリースタイルダンジョン』も1つの足がかりとして、人生を軌道に乗せていこうとしている段階です。
ただ、はるか先まで見据えながら人生設計を作るのは苦手なので、あくまでも芯はブラさずに、目の前の山を確実に超えながら、将来的に高みに登れればと思っています。
「disる」が浸透したのは嬉しい
――一般の方にも“フリースタイル”という技法が定着しつつあります。現状について、担い手の1人としてどのように受け止めていますか?
黒ぶち:そもそもは相手への敬意を込めるのが前提でもありますが、否定するという意味の「disる」が浸透していたり、やはりその世界にいる人間として純粋にうれしいですね。過去にニューヨークでの一人暮らしを味わったとき、現地ではヒップホップやラップが当たり前にそこにあったんですよ。
かつてアンダーグラウンドの色が強かったヒップホップやラップにも「ポピュリズム(大衆化)」が必要だと感じているんですが、日本でも本場と似たように、生活へ溶け込み始めているような気もしています。