フリースタイルの理想は「くだ巻きおじさん」人気ラッパーに聞く
2019年9月、毎週火曜深夜に放送されている人気のラップバトル番組『フリースタイルダンジョン』で“3代目モンスター”の称号を手に入れたTKda黒ぶちさん。
かつては8年ほどサラリーマンとラッパーを兼業しながらも、2018年6月からはラップ1本に。地域を代表するという“レペゼン”文化のあるヒップホップ界においては、地元・埼玉県春日部市を拠点にして、精力的に音楽活動を続ける1人です。
フリースタイルという文化も定着しつつある今、シーンの担い手としてラップ界をどのように俯瞰しているのか。胸の内に秘める思いを伺ってきました。
崖っぷちの状態で、3代目モンスターに
――深夜番組『フリースタイルダンジョン』で、3代目モンスターになったことが話題を集めましたが、結果についてはいかがでしたか?
TKda黒ぶち(以下、黒ぶち):当時、実は結構崖っぷちだったんですよ。僕は当初、サラリーマンとラッパーを兼業していて、2018年6月にラップで生きていこうと決断したんですが、3代目モンスターを決めるトーナメントの話をいただいた頃は、ちょうど貯金が底を尽きかけていた時期だったんですよね。
正直なところ、気持ちで負けるわけにはいかない、ステージへ上がるからには、こてんぱんに負けるとは想像していなかったけど、結果がダメだったら「履歴書を書こう」と思っていて。反対に、オッケーだったら、音楽で生きる大きな自信を得られるはずだと考えていたので、どうにか首の皮1枚繋がったような感情でした。
30代に入ってようやくスタートラインに
――かつては兼業しながら、現在では“脱サラ”してラップ一筋の人生を歩んでいますが、30歳にして1つの道を決めた経験から感じる20代と30代の違いは何ですか?
黒ぶち:なかなか難しくもあるんですが、20代の頃は生活の中でさまざまな義務感に駆られていたかもしれません。今でも胸を張って満足にいえるほどではないですが、それこそ傍らにあった音楽が「自分の嫁」というか、音楽を食わせるために「とにかく金を稼ごう」と必死だったんですよね。
一方で、孔子が『論語』で「三十にして立つ」と言っていましたけど、30代に入ってからようやくスタートラインに立てた気持ちもあるんですよ。僕の場合は、偶然にも手術をするほどの大ケガを20代の最後に味わって、サラリーマン生活にピリオドを打ったのもあるんですけど。
先輩として憧れているヒップホップグループ「THA BLUE HERB(ザ・ブルー・ハーブ)」のみなさんがちょうど40代を謳歌されているのもあり、20代で培った土台を敷きつつ未来へ向かいどれほど功績を残せるかという気持ちもあります。