過労死ラインの長時間労働が397万人も。最新「過労死白書」の注目ポイント
10月1日、厚生労働省は「令和元年版 過労死等防止対策白書」を公表しました。これは、過労死等防止対策推進法に基づき、国会に毎年報告を行う年次報告書です。令和元年版はその4回目となるものです。
そもそも「過労死」「過労死白書」とは?
厚生労働省は「過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会」の実現に向け、過労死等防止対策に取り組むとしています。「過労死等」とは以下を指します。
① 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
② 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
③ 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
今年の白書のポイントは、長時間労働が多く見受けられるとされる建設業、メディア業界に関する労災認定事案の分析、業界団体・企業等の過労死等防止対策のための取り組み事例をコラムとして多く紹介していることが挙げられます。
それでは白書で公表されている実態の中から、私たちに身近な内容をピックアップしてみましょう。そしてそこで浮かび上がってくる厳しい現実、また過労死防止のためにどのような対策が実施されようとしているのかを紐解いてみましょう。
① 1週間60時間以上働いている人は397万人
法律で定める原則の1週間の労働時間は40時間です。長時間労働による過労死の認定ラインは、時間外労働が月80時間以上とされています。
週60時間働くということは、1週間で20時間以上の残業をしていることになり、月80時間という過労死ラインにひっかかってくる予備軍ということです。
1週間の就業時間が60時間以上である人の割合は、平成16年以来減少傾向にあり、平成30年は6.9%と、前年比で0.8ポイント減少しています。人数では前年比で約35万人減少し、397万人となっています。業種別にみると運輸業・郵便業、教育、学習支援業、建設業の順に、その割合が高くなっています。
② 年次有給休暇の取得率は微増傾向
年次有給休暇の取得率はここ数年上昇傾向が続き、平成29年には18年ぶり5割を超え、51.1%になりました。
産業別では、電気・ガス・熱供給・水道業では72.9%に達しているのに対して、建設業では38.5%、宿泊業・飲食サービス業では32.5%と、かなりばらつきがみられます。