9時始業の会社にちょうど9時に着くのはアリ?出勤時刻と始業時間の違い
ビジネスマンにとって時間厳守は何より大切なものだ。取引先や上司との信頼関係を築くためにも、始業や待ち合わせなどの予定には時間ぴったり、あるいは5~10分前に到着しておくことが望ましいだろう。
しかし、仕事の疲れがたまっていたり、前日夜更かしして一秒でも長く眠っていたい……と思いたくなるのがbizSPA!世代の若手ビジネスマンのホンネ。
そもそも「定時(始業時間)が9時」という会社は何時に会社に行くのが正しいのだろうか。9時ちょうどにオフィスに到着すればいいのか、それとも9時に仕事を始められる状態になっているべきなのか? 特定社会保険労務士の澤上貴子さんに解説してもらった。
始業前の準備も労働時間か?
就業規則または労働契約書で、始業時刻が9時とされているのであれば、その時間から業務を行うことが求められるでしょう。一方で、実際には9時から業務を行うためには、それより前に会社に着いて、何かしらの準備に多少の時間がかかるのが普通でしょう。
始業前のこの準備時間は、労働時間としてカウントされるのでしょうか。
労働基準法における労働時間の原則は、1日8時間、週40時間ですが、そもそも労働時間とは、どのような時間のことを言うのかについては、そのような条文はなく、最高裁判例「三菱重工業長崎造船所事件(平成12年3月9日)」においてこう示されています。
「労働基準法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではない」
要約すると、「その時間が会社の指揮命令下におかれているか否か」で労働時間であるのかそうでないのかを判断するということです。
10分間の朝礼も労働時間?
ポイントは就業規則や法令によって定められているのか、会社の指示があるのか、業務に不可欠か、という点です。それでは具体的に考えてみましょう。
① 始業の前に10分間の朝礼を義務付けている
→ 会社の指示とみなされ労働時間とされる可能性が高い
② 更衣室で身だしなみを整える
→ 一般的な準備であり労働時間とはされない可能性が高い
③ 始業の10分前に来て机の周りを整頓している
→ 特に指示されていない限り労働時間とはされない可能性が高い
④ 建設現場、危険な作業のため防護服や作業服に着替え、工具等を準備
→ 仕事を行う上で不可欠、必然的に付随する行為のため労働時間となる。
⑤ PCを使う職場で始業時間までにPCを起動しておくよう指示がある
→ 少なくともPCを起動した時間から原則として労働時間となる。
就業時間から仕事に取り掛かれるよう準備をするのは社会人のマナーですが、このような基準で判断していただければと思います。
<TEXT/bizSPA!取材班>