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上司が泣きながら社員に土下座「私の新卒ブラック企業体験記」

学び

 スムーズに行けば10分で終わる朝礼は、だいたい平均して30分。長いと1時間以上におよびました。

「ショックだったのは、数字が未達なのを詰められたある課長が、朝礼の最中に泣きながら土下座し出したのを見たときです。いい歳した大人の男性が会社で泣いてるって時点で結構衝撃的でしたが、それを誰も止めないのもまた……」

パソコン初心者すぎるゆえ上司と仲良く

 そんな日々殺伐とした空気漂う社内でしたが、サキさんは上司であるおじさんたちを早々に懐柔することに成功します。

 その方法は簡単で、上司たちにパソコン操作を丁寧に教えてあげたこと。A印刷の連絡手段は電話とFAXがメインだったため、メールの送り方すら充分に理解できていない上司や、両手人差し指でキーボードを操作する上司がゴロゴロいたのです。

「パソコン教室の指導員みたいな(笑)。他の会社じゃありえないだろうなと思いました」

 取引先から届いたzipファイルを解凍しただけで感嘆の声があがり、エクセルに簡単な関数を入力しただけで「すごい新人が来た」ともてはやされたサキさん。とにかく優しく、下から下からの指導を心がけたそう。

「それで気さくに声をかけてもらえるようになった気がします。仕事で困ったことがあっても助けてもらえたり、可愛がってもらいました」

どこでも天国に……ブラックのススメ!?

天使と悪魔

 上司たちからサキさんへの対応はホワイト。でも、ネットでその社名を検索しようとすれば、後ろに「ブラック」というキーワードがサジェストされるA印刷。

 終電間際までの残業が続いても、タイムカードは総務部によってナチュラルに定時で打刻……それでも誰も何も言いませんでした。

「え? こんなのいいの? って思っても、他の会社を知らなかったので。『社会は甘くない。どこもこんなもの』って思っていました。そうじゃないですよね」

 転職後の現在、いい意味でのギャップを感じながら働くサキさんは、こう続けます。

「ブラックから始めると、だいたいどこに行っても良い会社だと思えます。それはそれでいいですよ(笑)」

<取材・文/筒井あかり>

会社員。1987年生まれ。出版社広告部を経て、現在ITベンチャーに勤

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