ヤフーが「Zホールディングス」に社名変更。どんなメリットが?
1. 事業の機動性を高める
従来のとおり、1つの会社に複数の事業を集約している状態だと、社内の意思決定プロセス(決裁権限規定に定められたプロセス)が事業運営上のボトルネックとなりえる。その対策が「事業の特性に合わせた意思決定プロセスを導入し、事業の機動性を高める」だ。
インターネット関連サービスと、金融事業では本来、必要な慎重性・社内承認プロセスに要する時間が全く異なる。インターネット関連サービスでは、世の中の変化に素早く適合するため短時間での意思決定が求められる。
また、試行錯誤をしながら事業展開を進めていくのもインターネット関連事業の特性である。一方で、金融管理事業では、スピードよりも正確性・安全性を重視することが求められる。
つまり、求められるスピードが異なる2つの事業を分けることで、各事業の特性を反映した意思決定プロセスを構築できるようになるのだ。
2. より高度な人材を採用しやすくする
事業ごとことにそれぞれ異なる会社が事業運営をすることで「事業の特性にあった高度な人材を採用できるようにする」ことができるようになる。
成長中の金融事業においては、経験豊富な高度な人材が必要である。大手銀行でノウハウを培った高度な専門性を所有する人間を採用する必要があるが、エンジニアよりも高い給与を支払う必要があるため、今までのインターネット関連事業を前提とした既存の給与体系定だと柔軟に対応できていなかったと考えられる。
今回のグループ再編により、金融管理事業を担う新会社は、独自の給与規定をつくることができ、柔軟な人材確保がしやすくなるのである。
3. 金融事業のガバナンス強化ができる
金融事業者にとっては不正を発生させないための、社内ガバナンス体制の構築は、非常に重要な事項である。また、金融事業者が対応しなければならない規制も多く存在する。
このような状況において、高い水準の“あるべきガバナンス体制”を構築するためには金融事業に特化した会社にして、グループ他社よりも厳しいガバナンス体制を構築をすることが重要なのである。
従来のインターネット関連サービス事業とひとつの会社であった場合には、このような高いガバナンス体制を構築するのが容易ではなかったと考えられる。
ここまでヤフーグループ再編の概要と狙いを見てきたが、次回の<ヤフーが名称変更。グループ再編のとき経営陣はどんな議論をしているか?>記事では引き続きこのようなグループ再編の実施に至るまで旧ヤフー(株)社内で上層部が検討していたであろう事項を解説していく。
※当記事に関連するいかなる損失(株式売買などにより生じる損失を含む)について筆者は一切責任を負いません。
<TEXT/小森ほうめい>