今年で120年、食堂車の歴史を味わおう。鉄道博物館で企画展開催
第5章:食と鉄道の新しいカタチ
五十嵐主任によると、第5章は昨今流行の“レストラン列車”を紹介する計画をたてていたが、諸般の都合でJR東日本のクルーズトレイン〈TRAIN SUITE 四季島〉に一本化した。
ここでは食堂車DINING しきしまの厨房に定点カメラを設置し、その様子を撮影。15分間のVTRにまとめてある。五十嵐主任によると、撮影日は社員向けの研修が行なわれ、お寿司を握ったという。また、実際に使われている食器、制服も展示されている。
順序が前後したが、この企画展には往時の雰囲気を耳で味わう趣旨なのか、“音の展示”として、入口に急行〈雲仙〉の食堂車の音(昭和30年代録音)、第4章に新幹線ビュフェの車内音(1966年録音)が流れる。
企画展「走るレストラン~食堂車の物語~」
今回の企画展ではイベントが用意されている。なお、4つ目に紹介する「食堂車前夜! 昔なつかし駅弁祭り」は9月23日に終了したので、御容赦いただきたい。
① 走るコックさんの物語
2019年11月23日と2020年1月11日の13時00分から14時00分まで、本館2階てっぱくシアターで開催(定員45名。当日11時から整理券を配布)。寝台特急〈北斗星〉〈カシオペア〉食堂車の洋食メニューを監修していた五十嵐章総料理長を招いたトークショーを行なう。
② 展示解説員による企画展ガイドツアー
開催期間中の土休及び2020年1月2・3日の14時00分から14時30分まで、本館2階スペシャルギャラリー1で実施。定員は約20名。
③ 寝台特急〈あさかぜ〉の食堂車で働くスタッフ ドキュメンタリー映像放映
開催期間中、本館2階てっぱくシアターで毎日実施。11時30分と15時30分の2回制で、約15分放映される。定員は各回45名。
④ 蘇る! 1938年当時の食堂車「洋食定食」メニュー
企画展最大の目玉といえよう。開催期間中、本館2階のトレインレストラン日本食堂で実施。価格は税別3000円。1938年に日本食堂が発足した当時の昼食メニューで、もっとも高価だったという。
ただし、写真やレシピがないので、当時のメニューのお品書きを紐解き、現代の食材を使ったため、完全な再現ではない。“鉄道博物館オリジナルの昭和が詰まったメニュー”と解釈すればいいだろう。
報道公開時はステーキ(牛肉2枚で約300グラム)とロールパンが用意されたが、実際に注文すると、コーヒー、冷凍みかんがつく。資料によると、お品書きの「果物」はなにを提供していたのか不明なので、なつかしさを感じていただけるよう、冷凍みかんを採用したという。戦前と戦後をまたいだ“究極の一品”だ。
消費税率引き上げに伴い、入館料を改定
消費税率引き上げに伴い、2019年10月1日から鉄道博物館の入館料(税込)は一般1300円から1330円、小中高生600円から620円、幼児(3歳以上の未就学児)300円から310円にそれぞれ改定される。
また、てっぱく年間パスポートも一般は5000円から5100円、小中高生は2500円から2550円、幼児は1000円から1020円にそれぞれ改定される。ちなみに一般と幼児は4回分、小中高生は5回分でモトがとれる。
鉄道博物館は、学習図鑑にまとめてもよさそうなほど質が高い。1度、私用で行った際、すべてまわり切れないほど。鉄道の世界は奥が深い。
【取材協力:鉄道博物館】
<取材・文・撮影/岸田法眼>