立教大学が「AI専門の研究科」新設。社会人がAIでチャンスを掴むには?
基礎を学ぶからこそ、本当のAIビジネスが生まれる
――文理融合型の研究科ということなのですが、理系出身ではなくても勉強に付いていけるのでしょうか?
内山:AIの技術の中でも、ディープラーニングはここ数年で急激に発展した技術です。大学院からでも第2の専門分野として十分に力を磨いていくことができます。
未知の部分も多くある分野なので、教員と院生がお互い協力することで、我々が思いつかないことをやる人がどんどん出てくるだろうと思います。教員が指導するというよりも「一緒に新しいことをやっていこう」というフラットな空気になるのではないでしょうか。
――エンジニアではない社会人が自分自身でAIを基本から学ぶメリットは何でしょうか? ビジネスでAIを活用する場合、AIに精通したエンジニアに依頼することがほとんどだと思いますが。
内山:非エンジニアの方がこの研究科を修了した場合、おそらくサービスやプロダクトの開発の現場ではAI技術の実装をエンジニアに依頼することになるでしょう。
しかし私自身が企業の方と話していて実感することですが、AIの知識がないと、結果的に齟齬が出たり、そもそもやりたいことの方向性が的外れだったりすることが多いのです。そこを変えるのがこの研究科の目的のひとつでもあります。
――確かに、メディアでAIという言葉をよく目にしますが、ふわっとしたイメージしかない人が多いかもしれません。
内山:ひとくちに人工知能といっても、人間と昆虫の知能くらい異なるものまで、ひとくくりにして人工知能と呼ばれているのが現状です。例えば、現在ビジネスで重要だとされているのは「Airbnb」などに使われているような、人々の嗜好を推測する分野です。統計学的に最も確率の高い推測をすることは、非常に役立つ技術ではありますが、実態はそれほどレベルの高い「知能」ではありません。
人工知能が「知能」として真価を発揮するのは「アルファ碁(Google DeepMindによって開発されたコンピュータ囲碁プログラム)」のようにプログラムそのものが自律的に最善手を発見したり、人間に頼らずに高度な抽象化や概念化ができる場合です。
最新の研究ではそれが可能になってきています。それを学ぶことで、本当の意味で人工知能の可能性を理解し、将来、社会に役立てられるのではないでしょうか。
君はファーストペンギンになれるか?
――いよいよ8月22日から願書の受付が始まっていますが、どんな方にこの研究科に入ってほしいですか?
内山:今までAIが使われていない領域で使ってみようという人が来ると面白いかもしれません。ただ、あまり院生像を限定するべきではないと思っています。中高生の子供たちの教育に生かしていただいてもいいし、行政や政策に役立てたり、エンジニアとして次のステップに進むために利用してもらってもいいと思います。
――人工知能に興味のある社会人の方に、メッセージをお願いします。
内山:AIの技術は様々な分野で使われ始めていますが、まだどの分野でも本格的に使えていないのが実態です。だから本当にこれからが勝負。新しくキャリアチェンジしたい人にとってはチャンスだと思います。人工知能の活用は始まったところなので、先行者優位があります。そういうチャンスを掴みたい人にチャレンジしていただきたいですね。
<取材・文・撮影/都田ミツコ>