事故物件に住んでみたら、謎の音が…新入社員の恐怖体験
特殊な環境で仕事の楽しさに目覚めた
――若手社員のうちに幽霊物件に住んで得たものはありますか?
建部:何か嫌なことがあっても責任転嫁できたことですかね。なにか上手くいかないことがあっても「全部この部屋のせいなんだ。僕は悪くない」と思うことで、乗り越えられた失敗が意外とありました。
あとは、毎月のように家族絡みのトラブルで親兄弟の嫌な一面を散々目の当たりにしましたけど、おかげで溜まっていた膿(うみ)を全部出せた感じがします。ちなみに、今の嫁と付き合うようになったのも、蒸発した僕を心配してくれたことがきっかけなんです。
――いわくつきの物件に住むという経験も結果的にプラスになったんですかね。
建部:まぁ、こうして本として形になりましたし、現時点でのぼくの代表作と言えるかもしれません。当時は特殊な住環境を何とか楽しむため、霊媒師を呼んだり、自分から仕掛けたりもしたんですけど、特殊な工程を通じて仕事の楽しさに目覚めた実感があります。
早く帰ってやりたいことをやったほうが良い
――20代に向けてアドバイスはありますか?
建部:幽霊物件に住んだだけなので、参考になるかわかりませんが、日々の忙しさに忙殺されている人でも、ひとつやふたつは好きなものはあるはず。でも、余裕がないと選択肢が狭まり、悪循環に陥ってしまいますよね。
だから仕事を終わらすために漫然と会社にずっと残っているよりは、早く帰ってやりたいことをやったほうが良いですね。特に若いうちは、どんどん新しいことに挑戦するべきだと思います。
――もし当時に戻ってもう一度この企画をやり直すとしたらどうします?
建部:今度はガチの霊が出る物件に住んでみたいです。この連載は早い段階で僕の家族問題にフォーカスしてしまったので。もし見つけられたら、今度こそ、そこに住んでいる様子をYouTubeでライブ配信したいですね。
<取材・文/ヤナカリュウイチ 撮影/詠祐真>
【建部 博】
1984年東京都生まれ。雑誌『裏モノJAPAN』元編集部員。広告代理店勤務、フリーライターを経て、現職は『月刊MONOQLO』(晋遊舎刊)のデスク。うらぶれたスポットの取材をライフワークとし、成人映画館、ストリップ劇場などの「超個人的潜入取材」を続けている