ラブストーリーから階級差別を描く。インドの女性監督に聞く
人は恋愛から成長する
――エンディングがあえて明確に語られていないのはどうしてでしょうか? 監督のなかでは答えはあるのですか?
ゲラ監督:観る人によってラストシーンの感じ方は違うかもしれません。ただ、ハッピーエンディングだと多くの人が感じてくれたようですし、私もそう思います。ラストシーンでラトナがアシュヴィンにどのように呼びかけるか注目してください。
彼ら2人が現実的に結ばれるのかどうかということよりも、お互いから学び、ともに“より良い人間”に成長したということを感じてほしいです。
――近年ではバスでの集団レイプ事件や児童婚がニュースになったインドですが、インド女性の社会的地位は改善されていると思いますか?
ゲラ監督:多くのインドの女性たちが女性の地位を向上するために活動していて、様々な草の根運動もありますし、「#MeToo」に影響されたムーブメントもありますが、正直、社会全体として女性の地位が向上しているとは思えません。
インド社会における女性監督の立ち位置
――インドでの女性監督の立ち位置はどうなのでしょうか?
ゲラ監督:今はパリに住んでいますが、この映画を撮ったときはインドに住んでいました。映画監督としては、自分のことを女性だと意識したことはないですね。でも実際、女性監督にとって、どこの国でも映画を撮ることは難しい。投資家を募るのは男性のほうが圧倒的に有利なんです。
何が問題かというと、男性は女性ではないから、“女性であること”や女性が受ける性差別を理解できないんですよね。今回の作品だって、ラトナの成長をファッションで表現するなんて、多くの男性にとっては理解できないでしょう?!(笑)
インディーズの映画界においてはインドでも女性の監督は増えています。ただ、世界のメインストリームな映画界、いえ、映画だけではなく、ほかの産業でも権力の中枢にいるのは男性たち。私たち女性が男女平等に向けて歩む道のりは険しい。でも、この作品で描かれるラトナの成長が、女性にとって何かしらの励みになるとよいなと心から願っています。
<取材・文/此花わか>