旅行代理店に勤務する兼業ヤクザも

　続いて、関東の元暴力団関係者がこんな話を教えてくれた。

「普通にサラリーマンをやりながら、ゲソつけてる（ヤクザをやっているという意味）奴もいる。俺の知っている現役組員の中には、暴力的なオーラを完全に消している奴がいるんだ。そいつは刺青も入ってないし、小指もある。その見た目の“堅気感”を逆手に取って、旅行代理店に勤務していた。もちろん暴力団員という身分を隠してね。

　まあシノギがないから合法の仕事をやってるんだろうけど、そうやって裏でヤクザやりながら、表では普通にサラリーマンもこなしている。なかには会社に内緒でヤクザの慰安旅行を手配して、売上をそのまま懐に入れているツワモノもいた。まさに芸人の“闇営業”顔負けだよ」

　昔と違って、今のアウトローは見た目だけで判断するのは難しい。「もしもウチの会社の同僚に現役ヤクザがいたらどうしよう!?」という余計な心配をしてしまうエピソードである。

「そういえば、脱サラして詐欺師に鞍替えした奴もいたな。俺が現役だった頃の話だけど、交流のあった組関係者が詐欺の被害にあってさ。で、いろいろ調べてみたら、相手はそのリーマン詐欺師だったんだ。そいつ自分がヤバくなると、バックにいる山口組系の有力団体の代紋をチラつかせていたそうだよ。

　しかも最後はケツ持ちのヤクザすら裏切って、海外に飛んだ（逃げた）そうだ。脱サラ詐欺師がヤクザ食ってたんだからスゲェよ」（関東の元暴力団関係者）

　官民挙げて反社会的勢力の排除に邁進する時代。それでもヤクザと一般社会は、地続きにあるようだ。

＜取材・文／永田明輝＞