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「フランス映画祭2019横浜」の裏側。お祭り騒ぎに見えて実はシビア?

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 1895年、世界初の映画はリュミエール兄弟によってフランス・パリで封切られた。アニメ、トリック、コメディ、犯罪など今や当たり前のようにある映画ジャンルや世界初の女性監督もフランス映画界から生まれた。

フランス映画祭

2018年のフランス映画祭の模様

 映画は自国が創造した“芸術文化”だという自負があるからこそ、フランス文化省には映画行政を管轄する国立映画センター(CNC)があり、映画界への様々な保護政策を施行することで、映画を“産業”としても大切に育てている。

フランスの映画予算は日本の40倍

 CNCが年間800億円の予算を映画に費やしている一方、日本映画界の懐事情はどうか。映画監督の深田晃司氏は「独立映画鍋」上で、「文化庁が毎年映画のために使う資金は、多く見積っても約20億円です」と明かす。

 ユネスコ統計局(UIS)の調査「Record Number of Films Produced」によると、フランスは映画製作本数が年間約270本と、日本の約580本の半数も満たないのに、日本の40倍もの予算を映画界にかけているのだ。

 毎年、世界各地で開催されるフランス映画祭も、フランスが公費を使い、自国映画をプロモーションする活動のひとつだ。マニアックな映画ファンや業界人のお祭り騒ぎというイメージもある映画祭の実像は、一体どういうものなのか――。

 今回は、6月20~23日に神奈川県・横浜で開催される「フランス映画祭2019 横浜」の裏側について、日仏の映画関係者を取材した。

映画祭とフィルム・マーケット、2つ機能

フランス映画祭

 フランス映画祭には、日本でまだ配給が決まっていない高品質の映画を上映したり、すでに配給が決まっている映画を公開前に一足早く上映したりなど映画ファンを喜ばせる映画祭としての機能、そして、フィルム・マーケットとしての機能の2つがある。

 映画祭が始まる前の3~4日間にかけて開かれるフィルム・マーケットは、映画のセラーとバイヤーが出会い、配給権の売買を行う市場だ。

 フランスのインターナショナル・セールス・エージェンシー「Playtime」の共同創設者であるニコラ・ブリゴー=ロベール氏によると、セラーがフィルム・マーケットのために来日するメリットは、配給権をめぐる商談以外にも、2つあるという。

「1つは、“情報交換”すること。海外のセールス・エージェンシーがバイヤーである日本の配給会社を訪ねて、経営者やスタッフと直接コミュニケーションを取ります。

 彼らの企業文化、マーケティング戦略や日本のマーケットを知り、お互いの持つ情報を交換することで、世界の映画界における動向や課題について理解を相互に深めることができるのです。

 もうひとつは、“パーソナルな信頼関係”を築くこと。定期的に会うことは信頼へ、そしてビジネスへと繋がります」

 カンヌ国際映画祭やトロント映画祭に代表される世界規模の映画祭ではパーソナルな関係を結ぶことが難しい。エンターテイメント産業は巨大ビジネスとはいえ、そこで働く業界人の世界は意外にも小さく、映画祭で顔を合わせる面々は毎年同じだからこそ、最終的には“人対人”のビジネスになるというわけだ。

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