カナダの注目女優が語る、若者が自分を見失う理由「目標は見つけるものではない」
プレッシャーは人を“頑な”にする
――本作から、カナダの学校では、「人生の目的をもつこと」や「仕事で成功すること」というような、個人主義や個人的成功に重点をおいた教育をしている印象を受けました。成績優秀で聡明なレオニーがこういった社会的価値観に反抗しているのはなぜでしょうか?
カレル:レオニーはとてもシニカルな女の子で、プレッシャーを感じていないことを大人に証明するために、あえて反抗的な態度をとっています。「未来なんて大切じゃない。そのときにその場で考えればいいんだ」と自分に言い聞かせている部分もあるかな。
作中、レオニーの両親は「人生の目的をもつ」「仕事で成功するために勉強をする」というようなプレッシャーをレオニーにかけますよね。こういった親の過干渉が彼女をより“頑な”にしてしまいます。もし、家族がもう少し彼女を自由にさせてあげたら、あそこまで反抗的にはならなかったでしょう。
――フランス文化圏であるケベック州は、本作で労働運動が描かれているように、ほかのカナダのエリアよりも、フランスのように社会主義的な色が濃いと聞いています。こういった要素もレオニーの性格形成に影響していると思いますか?
カレル:社会的プレッシャーはどんな社会でも存在していると思います。ただ、カナダのなかでもケベックは文化水準が高く、学歴重視社会ですから、ケベックの生徒たちはほかのエリアの子供たちよりも、より高いプレッシャーを感じているのかもしれません。
挫折することで自分を受け入れられるようになる
――インスタグラムで見るカレルさんはとても明るくて、本作とは全く違う雰囲気ですね。
カレル:レオニーとは真逆で、私は都会の放任主義の家庭で育ちました。だから、彼女みたいにシニカルや反抗的な態度をとったことは、あまりないかも。まぁ、ティーンならではの反抗期はありましたけど(笑)。もし、レオニーのような地方で生まれ育っていたら、芸能界があまりにも遠い世界だと思って女優を目指さなかったかもしれませんね。
私が女優になったのは11歳だったので、学校も定期的に行けなかったし、人より早く大人の世界に入ったことで、大変な経験もしました。大人の世界のなかで孤独を感じたり、自分のイメージ戦略に翻弄されたり、演技を批評されたり……。ただ、人生の挫折や壁を乗り越えていくと“自分”が見えてくるんですよね。自分を受け入れるしかなくなってくるというか(笑)。
――11歳で女優になったきっかけは?
カレル:ほかの子供たちがアニメを観ている傍ら、小さな頃から実写映画が大好きで、自分自身でこの世界に入ろうと決心したんです。たまたま母親の知り合いがアーティストのエージェンシーで働いていたので、私から直接その人に電話していろいろと聞きました。もちろん、両親は大反対ですよ!(笑)両親は私の学業がおろそかになることを心配していたので、できるだけ学校を優先することを約束して、やっと許してもらいました。