20代に広がる“麻薬だけじゃない”依存症。アルコール、処方薬にも…
人気音楽ユニット・電気グルーヴのピエール瀧さんの逮捕でも注目が集まる薬物依存症の問題。
薬物依存症に陥るきっかけや、どういった人たちが当事者となっているのか――。今回はさまざまな依存症の治療に関わってきた精神保健福祉士・社会福祉士の大森榎本クリニック精神保健福祉部長・斉藤章佳さんに話を聞きました。
きっかけはちょっとした好奇心
――薬物依存症、あまり身近に感じられないように思うのですが、依存症になってしまう人はどういったきっかけで薬物に手を出してしまうのでしょうか?
斉藤章佳(以下斉藤):薬物に手を染めるきっかけは本当に些細な事です。ほとんどの場合、興味本位だと思います。先輩や彼氏に勧められて断れなかったとか、クラブで横から回されてきたから使ってみたとか、そんな動機が多いです。
――どのような場所で薬物を手に入れるのですか?
斉藤:クラブなどで売人から買うというのが一般的ではないでしょうか。ただ、昨今では手に入れる手段が多様化してきています。私が知っているケースでは、スポーツジムで出回っていたり、それこそネットで購入できたりと気軽に薬物を手に入れるようになっています。
――若者の薬物事情についてはどうですか?
斉藤:コカインや覚せい剤などのハードドラッグは諸外国に比べるとそう多くはありません。私は小中学校で定期的に「薬物乱用防止教室」の講師をしているんですが、正直なところ、彼らにとって薬物はまだ身近な存在ではありません。危険性をことさら強調しても、みんなきょとんしています。ただ、若年層の薬物ユーザーがいないかと言えば、別の話です。近年、圧倒的に増えているのは大麻ですね。
若者が陥りやすい薬物依存は?
――若者に大麻の利用者が多い理由とは?
斉藤:そもそも薬物は高額。患者さんたちの話では、純度の高いコカインであれば販売価格1グラム6万~7万円程度、覚せい剤でも4万~5万円と言われています。それに比べて、大麻は5000円前後と、コカインや覚せい剤に比べて非常に安い。自宅で栽培している人も少なからずいて、他と比べて入手もしやすいです。
ただ、正直なところ、コカインにしても、覚せい剤にしても依存症患者になるまでにお金と時間がかかります。でも若者はそこまでお金がないから、相談が多いのはアルコールや処方薬、ネットゲームの依存です。
少し前までは、アルコール問題の相談で受診する人が飲んでいるお酒は日本酒や焼酎、ブランデーやウイスキーなどが一般的でした。しかし最近だと、スーパーやコンビニなどで安価で手に入るストロング系(アルコール度数9~12%)の缶チューハイがより身近になっている印象です。